第18話 クッキー
全員が落ち着いた頃…
ガチャン!
なんと、リリアンがノックなしで部屋に入ってきた。
「うわっ!ノックしてよ!」
「ノック?なにそれおいしいの?クッキーみたいなのかな?サクサクして美味しそう!」
ここでリリアンは面倒くさいやつだと確信したミリア。
リリアンはあっと言うように口を開け、気付いた。
「そっか!扉こんこんするの忘れてた!てへぺろー」
これはなかなかあざとい…
「人の部屋と分かってるのにノックしないって、普段どんな生活してるのよ」
ミリアがため息をつく。
…
コンコン…
また誰かが来たようだ。
「はーい」
ここでのラフィンは扉開け係。
ガチャ…
ノックしたのは、黒髪を腰まで伸ばした暗い雰囲気の女性だった。
「えーと…どちらさま?」
「……えっと…あの…」
女性はひどく緊張しているようだ。
両手を胸の前に重ね、下を向いている。
「どうかしたの?」
そう聞かれ、女性は寝たふりをしているリリアンを指差す。
「あの子の…姉…です」
全員がわあっと驚く。
「ええっ、お姉さんなんですか」
びっくりしてハルカがそう言うと、女性は実際はリリアンとは血の繋がりは無いと言った。
「えーと、どういうことかな…」
「その…リリアンが勝手に呼んでるだけなんです」
女性は軽く微笑んだ。
彼女がお姉ちゃんと呼ばれるようになった経緯を詳しく説明する。
…全員納得できたようだ。
そして女性はリオネスと名乗る。
「リオネスさん、よろしくね!」
ラフィンは彼女のために最高の笑顔を見せた。
…
…その後、皆で楽しく話していたが、リオネスはあまり楽しそうな顔はしなかった。
「そんな暗い顔しないで!ほら笑って!」
ラフィンがクッキーをはんぶんこして、リオネスに渡す。
リオネスはそれを受けとり、恐る恐る口に入れた。
サク…サク…。
…
「あ…おいしい…」
「でしょ!でしょ!美味しいでしょ!材料はパルタ王国産なんだよ!もう一個いる?」
ラフィンがクッキーを持って詰め寄ってくる。
…ゴン!
恐怖を感じ、後ろに下がったリオネスは、壁に頭をぶつけてしまった。
「わっ!大丈夫!?」
「いえ…大丈夫です…」
リオネスから見ると、ラフィンはただただ迷惑な人である…。
彼女に謝れば、少しだけでも印象が良くなるかもしれない。
…だがラフィンは、リオネスが頭をぶつけたのは自分のせいだと思っていなかった…。
すると突然、ハルカがラフィンの後ろに立つ。
「ん?なあに?ハルカ」
「あ、いや、おしゃべり中悪いけど…王国にモンスターが出たって連絡がきたの」
「…えっ!?」
「それもソウルっていう超巨大で強いモンスターらしい。私達の攻撃じゃ傷一つ付けられないくらい…」
…空気がしんと静まりかえる。
「ど、どうすればいいの…?」
皆から笑顔が消え去ってしまう。
「立ち向かうしかないわ。」
…ミリアの一言で、全員は「ソウル」と戦う事になった。