第1話 旅立ち
世界に突如現れた、手の形と大きさをした謎の生き物「てちゃん」。
害はないが、不気味なので精神的にダメージを受ける人もいる。
「メシダー!」
「ウマイ!」
このように簡単な言葉は喋れるが、会話は出来ない。
これは、そんなてちゃんの物語…ではなく、色々と自由すぎる王国の女王と小さな村の住人達の物語である。
「うどんうどんうどんーうどんーをーたべーるとー」
「ウマイ!」
「確かにウマイ!ってなるけど…」
私はハルカ。普通の村の普通の住人。
小さい村だけど、ここには夢も希望も沢山ある。
私は小さな村、メロディで産まれた。
産まれた時は普通だった。でも6歳くらいになって少し魔法が使えるようになった。
最初はテレパシーだけで、だんだん力が強くなってきてエアコンを触らず持ち上げられるようになった。
あれ?これって魔法じゃなくて超能力?
ま、同じようなもんでしょ。
でもここからが魔法なの!
最近になってから雷を落とせるようになった。
雷って言っても、静電気みたいなもの。
だからチクッとするだけで、敵を倒せるわけじゃないんだ…
スライム狩り、したかったなー…
いないけど。
村は活気で溢れている。
「こんにちはー!」
ほら、元気な挨拶が聞こえてくる。
「おお 嬢ちゃん、まんじゅう食べていかんかね?」
「食べます!ありがとうございます」
このおじいさんはいつも何か食べさせてくれる。
くれる食べ物がすごく美味しいから嫌いではない。
「ハルカ、行ってらっしゃい。気を付けてね」
今日は女王様の治めるパルタ王国に旅に出る日。
お供は会話出来るてちゃんのテくんと親友のミリア。
「お供って何よお供って!」
「あ、聞こえてた?」
癖でついついテレパシーを使ってしまう。
お城に誰でも入れるくらい自由な王国…なんだか楽しみ。
どんな人が住んでるんだろう。
女王様はキレイなのかな。
うーん、わっくわくが止まらない!
「みーんなーで冒険♪みーんなーで冒険♪」
冒険初日はルンルンで順調だった。
「ここに泊まるよ。」
「エエ…コンナ所デ?」
そこは雑草が生い茂った、今にも崩れそうな廃墟だった。
「外よりいい…かな?」
ガタン!
「ひぃっ!ミリア…やっぱり外で寝ようよ…」
ハルカが顔を真っ青にする。
「私の言うことは絶対!」
綺麗に布団を敷くミリア。
「オ供ノクセ二…」
「え?何か言った?」
ミリアが怒ったように言う。
「早寝早起きしてすぐここから出よう」
ハルカは布団に入った瞬間寝た。
「はいはい」
昼頃、王国ではこんな事があっていた。
「ワタスタルラルクセントアベン」
美しい女王が暗い部屋で呪文を唱えている。
平和を保つ魔法を使っているのだ。
そう、王国が平和なのは女王が魔法を使っているおかげなのだ。
もし魔法を使わなかったら、王国は滅んでいただろう。
あれだけ自由だと凶悪な犯罪が増えてしまうからだ。
「メシ!」
「メシクレ!」
「はい、どうぞ。」
女王様は優しい。
だが、怒らせると誰よりも怖いらしい。
ー午前7時ー
「ぐがあああああ」
全員起きているのに、どこからかいびきが聞こえてくる。
「モンスターよ。気を付けて」
「モンスターなんか私の魔法でイチコロだよ!」
ハルカがモンスターに突撃していく。
「あっ!ちょっと!」
ハルカが両手を構え、呪文を唱える。
「アルダサヘンイズケリベクタ」
全身に青いオーラを纏う。
「ファイヤー!」
手から炎が放たれ、モンスターを燃やした。
モンスターを倒した。
「あっちっち!他の魔法使えばよかった…」
ハルカは少し火傷を負った。
「あんた、なかなかやるじゃない…」
ミリアは驚いた。
「えへへ、そうかな…」
「見かけによらずって意味で、別に褒めた訳じゃないから」
ミリアが目を逸らして言う。
「アト一時間デ王国二ツクネ」
「そうなの?楽しみ!」
ハルカがスキップしながら鼻歌を歌う。
「あっ!面白い本とかあるかな?」
(この前探して見つからなかった本とか…)
「あるかもね。」
二人と一匹が森の中を歩く。
その森の中を出ると、王国が赤くなっているのが見えた。
「あれ?なんか王国燃えてない?」
「まさか、モンスターの仕業!?」