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空のおとしもの  作者: stardom64


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♢ 第四章 地上の森2 ♢

  


 ガタンごトン、ガタンごトン。


 石や、木の根っこを乗り越え、進んでいく馬車。


 そのため、座り心地は最悪。


 お尻が痛い。


 さっきの女の子はどうやって来たんだろ?


 というか、なんで、あんなところまで?




「ね、見て。」


 マリアの声。


 窓の外を見ると、緑の木々とは打って変わってあたり一面、赤茶色の大地。


 遠くには大きな風車が見える。


 あれが村なのだろうか。


 あたりには、荒涼とした景色が広がっていた。




 ☆☆☆




 馬車から降りるとものすごい熱気。


 地面はひび割れ。


 木は幹だけ。


 葉っぱはない。


 空っぽになった井戸。


 干からびてひび割れた泉。


 砂にまみれた石畳。




「数年前は、緑あふれる土地だったのですが…。今はこの通り、草も生えないのです。」






「どうか、この村をお救いくださいませ。」




 ☆☆☆




 干からびた井戸の底。


 水はなく、そこにあるのは、サラサラした砂。


 ここ数日の日照りで最後の井戸も枯れてしまったらしい。


 手ですくうと指の間を通り抜けていく。


「あっ、女神さまだ。」


 頭上から聞こえる可愛い声。


「よっと。」


 梯子を器用に下りてくる女の子。


 確かイブちゃんだったかな。


 森で出会った初めての人間の女の子。




「こんなところでどうしたの?」


 事情を説明する私たち。


「そっか。」


「えっ、でも雨降らせればいいんじゃないの。」


「ほらっ女神様なら魔法で、えいって☆。」




「いや、私たち。天気の神様じゃないからね?」


「そういうのは神様の仕事なのよっ。」




「村の井戸は全部こんな感じなの?」


「うん。だから、最近は森に食料を取りに行ってるんだ。」


「雨は降ってないの?」


「もうずっとこんな感じだよ。食べ物もないから…。森の中まで取りに行ってるの。」


「だから、森の奥まで…。」


「あっでも、隣の村の井戸はまだ枯れてないかも。森に近いし」


「ただ、暑すぎて、持ってくるまでにほとんどなくなっちゃうんだよ。」




「川でもあればいいんだけど…な。」




 ☆☆☆




 村から飛び立ち東の村を目指すあたしたち。


 太陽の光がまぶしい。


「あっあれじゃない?」


 双眼鏡で確認するマリア。




 村の東、森に近いエリアに広がる村。


 砂地の中に、ポツンと広がる石畳。


 上空から見てすでに家はなく、骨組みだけ。


「ドラゴンにでも襲われたのかな…。がおーって。」


「いや、地上にドラゴンはいないでしょ…。」


「というよりは戦じゃない?」


 マリアの言う通り、家の骨組みは真っ黒に焦げ、広場には朽ちた剣。


 戦争だろうか。




 しばらく歩くと水路が見えた。


 しかし、水はない。


 そして近くに石造りの井戸。


「この井戸のことかな?」


 試しに近くにあった石を投げてみる。


 カーンカーンカーンと甲高い音の後、ぴちょんというう音。


 今度は近くにあるバケツにロープをつないで放り込む。


「なんだ、あるじゃん。」


 引き上げると、そこには、バケツいっぱいの水。


「でも、取りに来ないってことは…。」


「とりあえず、入ってみましょ。結構水ありそうだし。」




「じゃ、わたしから。」


 中はだいぶ深そう。


 その辺の棒にロープを引っかけてゆっくりと降りていくマリア。


「オッケーっー。ついたよー。」


 しばらくすると、井戸の中から声。


「アリアー、いいわよー。」


「よっ。」


 あたしは井戸のふちを乗り越えると、真っ暗な井戸の中へと飛び込んだ。




 ☆☆☆




 じゃぼん。


 足が水につかる音。


 跳ね返った水で服はびしょぬれ。


 とりあえず、火打石でトーチに火をつけるあたしたち。


 ぱっと明るくなる井戸の中。




 でもそこは井戸にしてはとても広かった。


 井戸というより、水路?


 壁もトンネルみたいだし…。


 大昔の人たちが作ったのにあとから井戸をつけたのかな?


「でも、これなら村の方まで水を引けるわ。」




 方位磁石で村の方向を確かめるマリア。


「このあたりかな。」


「まかせてっ。えいっ。」


 思いっきりその辺にあった剣でガコンと岩壁を叩いてみるあたし。


 ぽろぽろと刃こぼれしてしまう剣。


 真っ赤になる手。


「いてててっ。」


「さすがにちょっと固いかもっ…。」


「ならこれは?」


 朽ちた剣を壁の割れた部分に何本も突っ込んでいくマリア。


 剣と剣の間に走っていくヒビ。


 ピシっピシッと音を立てる壁。


 最後の一本を打ち込むと…。


 ガラガラ大きな音を立て、崩れていく、固い、灰色の壁。


 中を見るとそこには普通の土。


 剣でツンツンしただけで、崩れていく。




「あとは、村の人たちに任せましょうか。」




 ☆☆☆




 パンパンパン、宙に上がる空砲。


 色とりどりの旗が掲げられ、そこかしこに仮設のテントが組まれ、筋肉自慢の男たちが井戸の中へ入っていく。


 あれから、少し時間がたち、あともう少しで、村というところまできた。


 今日は水路の開通記念というわけ。


 鍬を使って、水路を村の方へと掘り進めていく。


 そして…。




「え~いっ。」


 思いっきり、岩盤を剣でガコンとたたくあたし。


 大きな音を立て、最後の岩壁が崩れ落ちた。




 水路内に入り込む砂と暑い日差し。


 そして、その砂を覆うように流れ込む大量の水。


 湧き上がる歓声。


 噴き上がる水。


 水の中に飛び込む村人。


 それをあわててバケツですくう人。


 天に祈る人。




 乾いた大地はあっという間に緑に覆われていった。











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