97話
本日2話目
「いま、あそこでダンジョンから出てきたモンスターを討伐するために冒険者さんたちが戦っています。僕はよわっちぃから一緒に戦うことはできないけれど……ご飯を作ることはできます。お腹がすいたら力がでないって聞いたから、だから、ご飯を作って助けられたらって思って。だから、その、大きな鍋でいっぱいご飯を作ってあげたいので、鍋を貸してもらえたらと」
ガルモさんが、荷物を地面に置いた。
そして、大きな手で私の頭をがしっとつかんで上に向ける。
「坊主、自分をよわっちぃなんて言うな。お前は強い」
私が、強い?
「モンスターが出ていたら、誰も逃げたくなる。それなのに、戦っている人たちを助けたいと、わざわざ危険な場所に近づこうとするんだ。お前の心は強い。本当によわっちぃ奴は、心が弱いやつだ」
心が、強い?
「大丈夫だ、坊主。心が強いやつはな、成長できる。どんどん強くなれるさ。強さっていうのは、力じゃないぞ。いいか、力じゃない。力だけじゃ乗り越えられないことが世の中にはたくさんあるからな。間違えるな」
強さは力じゃない?
力だけじゃ乗り越えられないこと?
「よし、気に入った坊主。鍋を貸してやる。それから料理も手伝ってやるぞ」
「うわぁっ」
ガルモさんに持ち上げられ、肩に乗せられた。
ひえー、高い。っていうか、この年で肩車された。成人前で子供といえば子供だけど、もうすぐ成人するからほぼ大人ですけどっ!っていうか、そういえばシャルもやけに私を子供扱いするし、私って、そんなに子供っぽいの?
ガルモさんが地面に置いた荷物を持ち上げた。
「よし、行くぞ。振り落とされないようにしっかりつかまっていろ」
へ?行く?
鍋を運んでくれるっていうこと?確かに、私の力じゃその大きな金属の鍋は運べなさそうに見えるけど、収納鞄に入れれば大丈夫だと……と説明したかったけれど、上下にがこがこ揺れるので口を開けば下を噛みそうだ。
肩車されてるし、こんな高い位置から落っこちたら怖いしで、必死にガルモさんの頭にしがみつく。
【スキルジャパニーズアイ発動】
意図せず片目がふさがったりして、王都を抜けて森に入る。モンスターが出ている場所はこの森を抜けた先。
【スキルジャパニーズアイ発動:二重】
「あっ!」
バンバンとガルモさんの頭を叩く。
「どうした?坊主?」
ガルモさんが足を止めてくれた。
「ちょっと食料を調達しながら行きたいです。あそこにあるので」
「食料?あそこ?どこだ?」
指さしたところに見える文字。
【自然薯:栄養価の高い山芋。ちゃんこ鍋の具になる。とろとろねばねばで美味しい】
約束の2話目。
ところで、珍しく、全話は本文の誤字を2カ所修正して更新したのですよ。
……結果、あとがきで誤字っているという。えへ。
ご愛敬。
さ、出てきました。
ジャパニーズアイをお持ちの皆様の予想通りの、ちゃ、ん、こ、な、べ。
まずは自然薯。
とろろとして食べるだけじゃなく、火を通しても美味しゅうございますのよ。