92話
「はっ!僕は一体なにを!」
ドレスに縫い止められたドロップ品の石が気になってしまい……って、駄目だ!王都は本でしか見たことのないドロップ品を身に着けている人がうろうろしすぎて目の毒!
逃げるように大通りを通り過ぎて、裏通りを抜け、気がつけば王都を囲む高い塀が目の前にあった。
人が来ない端っこ。
はー。落ち着く。
「そうだ!思い出した!」
鞄の中から、宝箱を取り出し、中身を雪平鍋に入れる。
「これは、ドロップ品じゃないから!買った鳥の餌だからセーフ」
えへへ。
団子を作ってみよう。
【キビ:団子にするともちもちして美味しい】
鳥の餌改め、キビの小さい粒をゆでる……前に、麦のように殻を外す必要があるよね。麦とかと一緒?
その辺に落ちてた棒きれで、雪平鍋の中のキビをトントンと叩く。しばらく叩いてふぅーっと息を吹きかければ、殻が飛んでいった。それを何度か繰り返して殻を外す。
次はゆでるんだ。
その辺に落ちてた小枝をかき集め、火を起こしてキビをゆでる。水は水筒に入ってた物で足りる。
あとはお湯を捨ててから棒きれでたたいてつぶして……。
「うわぁ!何、これ……」
棒きれに次第にひっついてくるようになった。
「もしかして、この粘っこい感じがもちもち?」
砂糖を入れて混ぜ、くるくると一口サイズに丸めていく。
『がるるるる』
味見をしようと、一つつまんで口に入れようとしたところで、背後から低い獣の唸り声が聞こえてきた。
ハッとして振り返る。
「ふ、ふわぁっ」
腰がぬけて、しりもちをつく。
やばい、やばい、やばい、やばい。
大きな四本足のモンスター。
全身はブルーグレーの毛で覆った狼のような姿のモンスター。
モンスター辞典で読んだ。
これは、最上位種……、ドラゴンと並ぶ最強のモンスター、フェンリルだ。
腰が抜けて、立ち上がることも逃げることもできない。
なぜ、王都に、街に、モンスターが?
そうだ、そういえば、モンスターがダンジョンから出てきたから討伐依頼を受けたと……。
これが、厄災……?
もし、フェンリルレベルの最上位種モンスターが街に頻繁に現れるようになれば……街は壊滅……人類はどれだけ生き残れるか……。
すんふすんふと、フェンリルが鼻を動かす。
ひゃっ、食べられる!
肩をすくめて身を固くする……けれど、一向に痛みはない。
が、頭に水滴が落ちてきた。
何?うっすら片目を開く。
【スキルジャパニーズアイ発動】
うわわわっ!3階建ての家の窓から見下ろされるように、頭上にフェンリルの頭がある。
そして、太くて大きな牙の生えた口から、ぽたぽたとよだれが!水滴だと思っていたものは、フェンリルのよだれだった!
食べられる!いや、なんで、こんな恐怖を味わってるんだろう。
もう、ぱっくり一口で言っちゃってください……。
ちなみに、フェンリルの名前はブルーではない。
いつもご覧いただきありがとうございます。
フェンリル出しちゃった♪
っていうか、寄り道!厄災どうした!
大丈夫。厄災も近づいてる。ひたひたと。




