88話の続き1
「リオって、子供だよね」
「シャルだって、同じ年でしょう?」
本当は私より少し年下でしょとは、言わないでおく。これでもちょっと学習したのです。たぶん、そんなこと言ったらでこピンされます。
あ、でこピンは最近されなくなったから、ほっぺたぶにーか、お鼻むぎゅされます。
「リオと一緒にしないでくれる?子供なら、ああいうの嬉しいんじゃない?」
視界が代わる。また、シャルは飛んだんだ。
こんなにポンポンスキルを使って大丈夫なのかな?
今はダンジョンの中にいるわけじゃないのに……。いや、むしろモンスターに襲われる危険がないから無駄に使うのかな?
あ、違う。
きっとシャルはスキルを使う訓練をしているんだよね。普段からスキルは使えば使うほど能力は向上すると聞く。
無能スキルなど能力を向上させても仕方がないと思っていたから、まるっきりスキルの訓練という考えを持っていなかったのでうっかりしてたけど。
「ほら、食べなよ」
シャルが私の手に、露店で買った丸いものを乗せる。
「え?これ、何?」
親指と人差し指で輪っかを作ったくらいの大きさの丸いものが3つ。
「あら、その子はじゃが団子を知らないのかい?」
じゃが……団子?
団子って、さっき鳥の餌だっていうキビに書いてあった。
「これ、じゃが団子はどうやって作るんですか?」
「ああ、小麦とジャガイモをゆでて、つぶして混ぜて作るんだよ。砂糖も入ってるから甘くて美味しいよ」
ゆでてつぶして砂糖を入れて混ぜる。
「ほら、食え。小さな子供が大好きな味だから、リオも好きだろ」
うーん。なぜかシャルが私をずっと子供扱いしようとする。
「いただきます」
ほこっとして甘くて美味しい。
「シャル、おいしい。あ、お金」
「こういう時は、おごられるものだ」
こういう時?
「あの、ありがとうございます」
ニコッと笑うと、シャルがぷいっと顔を反らす。
団子の作り方は、ゆでてつぶして砂糖を入れて混ぜる。砂糖は昨日少し買ったし……。作ってみたいな。
もちもちして美味しいって書いてあった。もちもちってどんな感じなのかな?じゃが団子はふわっとしてほこっとした感じだ。
シャルに、じゃが団子のお礼であげ……って、駄目ーっ!
鳥の餌をくわせる気かって怒られる。
こそっと作ろう。こそっと。うん。ジャパニーズアイの言うことが本当か確かめるために、美味しいかどうか確かめるために作るだけで、別に自分ひとりがおいしいものを食べようというわけではないから。
もうこれ以上、シャルやサージスさんに変なもの食べさせたら……知られたら、お詫びのしようもない。
糞に、その辺に落ちてた葉っぱ木の実や木の根……モンスターに、挙句に鳥の餌って、駄目、駄目。
『シャル、すまんがちょっと来てくれ』
通信機能もついた腕輪からサージスさんの声が聞こえた。
「もー、なんだよ」
また視界が一瞬で変化する。
目の前にはサージスさんがいる。それから、この場所は?
ども。デートを邪魔された。一瞬にしてwww。
ま、こういうときは奢られるものだという描写がありますが、現実世界で、デートの支払いは男性側がするものであると主張しているわけではない。シャルというキャラクターがそう考えているだけです。
まぁ、でも、サージスさんは、デートに限らず、年下には奢りまくるタイプかな。
でもってリオはごちそうになるのに恐縮しまくり、何かお返ししなくちゃって思い詰めるタイプね。