86話
「まぁ、まぁ、いきなりどうしたの?シャルス、サージスさんと、あら、こちらの子は?」
パタパタとシャルの元に近づいてきたのは、めっちゃ美人のお姉さんだ。
真っ赤な口紅と真っ赤なドレスの似合う、30前の女性。ふわりと花の香りが鼻をくすぐる。
いい匂い、いい匂い。お金持ちの匂いだ。だ、誰だろう?サージスさんのことも知っているみたいだけれど。
「ほら、サージスさんはさっさとギルドに行きなよ。で、真ん中の街のギルドに付いたら連絡してくれる?そこなら飛べる。リオが行きたいなら連れてくし、リオが行きたくないなら、僕たち王都にいるから、帰りに寄って」
サージスさんが私の顔を見た。
「リオ、行きたいよな?な?お、王都はそりゃ楽しいかもしれないけど、たぶん、その、そう、俺のスキル見るのも面白いぞ?」
サージスさんの目が泳いでいる。
サージスさんのスキル……!どんなスキルなのか気になる!
「行きます」
「そうか、じゃぁ、へへ、先に行ってるな!」
サージスさんがウキウキしてドアに向かった。
「あら、サージスさん、もう行かれるの?というか、シャルス、一体どうしたの?あなたが誰かを連れてくるなんて珍しいわね?」
シャルが頭をぼりぼりとかきながら、部屋の中央に置かれていた椅子にドカッと座った。
「あのさ、パーティーで拠点を持つことになったから。王都からサージスさんに呼ばれたら飛んでいく生活やめる」
へ?
「シャルス、王都からいなくなってしまうの?どうして急に?今までは問題なくやっていたのに……」
綺麗な女性が明らかに動揺した様子を見せる。
「あ、あの」
どうしよう。パーティーの拠点を持つことになったのって、私がパーティーに加入したからだよね。
「あ、あら、ごめんなさい。って、シャルス、このかわいい子は何なの?」
シャルがニッと笑った。
ウエストポーチから、シャルが千年草を1つ取り出す。
「おみやげ。千年草」
「あら?さすがシャルね。いえ、さすがサージスさんかしら?」
千年草のことは、すでにこの女性は知っているようだ。どこまで話は知れ渡っているんだろう。
調整草と呼ばれる話。
千年草が取れるようになると、人類が滅びかねない厄災がやってくるという話……。私は知らなかったけれど、学校に通える人は知っている話なのかな。ギルドの人は知っていた。そういえばサージスさんも知ってた。
「いいや、”さすがリオ”だ」
シャルが椅子から立ち上がると私の手をつかむ。
すぐに視界が入れ替わった。
街の中にいた。
とても多くの人が広い道を行きかっている。
たくさんの店が並び、賑わいを見せている。
「すごい、こんなにたくさんの……人も店も初めて見た」
シャルが私の右手をぎゅっと握りしめる。
また、どこかに飛ぶのかな?
「僕から離れるな。迷子になるだろ。行きたいとこあれば連れてく。何が見たい?」
え?何が見たいか?
どうしよう、目移りしちゃって何って言われても。
そうだ。
どうも。今日も読んでくれてありがとう。
二人で街へ!
シャル(初デート)