85話
「は?指名依頼?うん、わかった。それはまぁ、後で、その前に、拠点を」
サージスさんがハルお姉さんが目の前に差し出した紙に目も通そうとせずに、ずいっと横によける。
「緊急指名依頼だから、後回しにはできないのよ」
ハルお姉さんがよけられた紙を再びサージスさんの前に戻す。
「緊急指名依頼?さすがS級冒険者のサージスさんです。すごいなぁ……」
と、感動しながらサージスさんを見ると、シャルがリオお姉さんから依頼書を取り上げる。
「何、これ、S級冒険者への依頼じゃないじゃん」
リオお姉さんがシャルから紙を取り返して、サージスさんの顔に突き付けた。
目の下のクマが真っ黒で、それだけに必死さが伝わる。
「そうよ、サージスさんのスキルじゃなきゃこなせない指名依頼。S級とかA級とかまったく関係ない話で、最優先事項」
サージスさんがそこまで言われてやっと、依頼書を受け取り目を通した。
「あー、ったくめんどくせぇけど仕方ないか……。なぁ、これって、千年草が現れた厄災の始まりか?」
サージスさんの表情が引き締まる。
え?
厄災?
そういえば、千年草は調整草とも呼ばれて……。
ドクンと心臓が激しく波打つ。
「分からないわ……。そうかもしれないし、違うかもしれない……ただ、何かが始まりつつある可能性はないわけではない……ようなまだ始まっていないかもしれないような」
ハルお姉さんに文字が浮かぶ。
【支離滅裂】
【疲労困憊】
【不眠不休】
【ドジッコ】
……意味の分かる言葉から分からない言葉まで、どんどんと現れては消える。
「はー、しゃあねえ。こればっかは後回しにできないか」
依頼内容はなんなんだろう?
サージスさんのスキル……そういえば、何か聞いたことはなかったけれど、モンスター討伐系のだよね?あんなにすごい戦いができるんだもん。
「シャル、リオ、わりぃ、ちょっとイーズ領まで行って仕事してくるわ」
「は?イーズ領って、王都を挟んでこの街の反対側の領地ですよね?ちょっと行ける距離じゃないですよね?」
イーズ領?
神父様に教えてもらった国の地図を頭の中に広げる。
この街が、王都から下に馬車で1週間ほどの位置にあるっていうことだった。イーズ領は王都からこの町までの倍くらいの遠さに位置していたはずだ。ということは、馬車で2週間ほどの距離だろうか。片道3週間。往復1か月以上かかることになる。
「大変ですね、往復するだけでも1か月以上……」
S級冒険者のサージスさん。
「うわぁ、大変だ!マジか!1か月以上リオの料理食べられないってことか?いや、大変すぎる、ちょ、ハル、この依頼別の誰か心当たりないか?俺じゃなくても誰か、別の……」
へ?
ハルお姉さんのこめかみに血管の筋が浮かんだ。
【怒髪衝天】
ん?怒るって字が入っている。うん、ハルお姉さん怒ってますよね。
さぶたいのばんごうごめん……
さて、あげなおし、まぁいろいろありまして。
あとがき、作品の話しておくと、使ってほしい日本語募集中!
やはり、どこかで、「ぴえん」は使うべきか。だいたい、時代を繁栄しすぎると、その後古臭さを感じるのですが……(´・ω・`)