8話
「もう、食事中だったのに。なんの用が……あ、S級冒険者のサージス様だわ!もしかして、私たちに用があるって、サージス様が?」
アリシアがサージスさんの姿を見て小走りで駆けよってきた。
「なんだ、クロ、お前まだこんなとこうろうろしてんのか」
サージスさんの後ろに隠れるように立っていた私の姿を見てフューゴが顔をしかめる。
「俺が倒した吸血蝙蝠のモンスターのドロップ品を、こいつに預けていたんだが、知らないか?」
サージスさんの言葉にフューゴが青ざめた。
「し、知らない」
「ほほー、本当に知らないんだな?ドロップ品はモンスターを倒した人間に所有権があるのは知っているだろう?誰が運んだとか関係ないのも知ってるよな?自分たちが雇った荷運者の荷物に紛れていたからって、倒した覚えのないレベルのモンスターのドロップ品があれば気が付くだろう?」
ロードグリが通常倒しているのは、第2階層までに頻出するモンスターだ。どのモンスターを倒しても出てくるドロップ品もあるけれど、モンスターの種類によって違う物もある。
フューゴの視線が泳ぐ。
「ほ、本当に知らなかったんです。すべての荷の管理は任せていたので、す、すぐにお返しします、だ、だから……」
マイルズ君が頭を下げた。
「ドロップ品横取りでワンランク降格」
サージスさんはマイルズ君の言葉を無視してお姉さんに声をかけた。
「戦闘能力のない荷運者をダンジョン内に残して逃亡することは重罪です。さらに2ランク降格ですね」
お姉さんがふぅと小さく息を吐きだす。
「ま、ま、待ってくれ、俺たちじゃ到底かなわない相手だったから、た、助けを、そう助けを呼びに行っただけで逃げたわけでは」
お姉さんの言葉にフューゴさんが慌てて口を開く。
「そう。置いて行ったことは間違いないのね。助けを呼びに行く場所は、まずはギルドでしょう。報告は入ってませんけれど?本当に助けを呼んだの?」
フューゴさんがあきらめたように肩を落とした。
「あ、あの、待ってください、僕は無能スキルしか持っていないので、スキル持ちの荷運者と扱いが違うはずなので……えっと、ロードグリはそこまでえーっと処罰されないんですよね?」
私の言葉に、サージスさんの顔がゆがみ、お姉さんが今度は盛大なため息をついた。
「それは、誰に聞いたの?と、確認するまでもないわね」
お姉さんがちらりとロードグリのメンバーを見てギルド職員に合図を出した。奥から2人の職員がやってきて、ロードグリのメンバーに縄をかける。
「坊主、ちなみにお前、荷運者として報酬はどれだけもらっていた?」
「はい。ちゃんと貰っていました。運んだ分の10分の1を」
「運んだ分の10分の1?回収した分じゃなくてか?」
サージスさんが驚いて声をあげる。運んだ分と回収した分と何が違うんだろう?
「しかも、メンバーが3人のパーティーなのだから、頭割りの4分の1、もしくは最低保証の10分の2が普通でしょう。10分の1とは……」
「あ、でも僕は無能スキルの半人前だから報酬も半分で……」
サージスさんが僕の言葉に怒って叫んだ。
「スキルは関係ねぇっ!」
「ご、ごめんなさい」
慌てて謝ると、サージスさんが口を閉じた。
「あ、いやすまん。お前に怒ったわけじゃない。おい、ちゃんと処分しろよ」
サージスさんがお姉さんを睨み付ける。
「それから、お前も処分の対象だろう?こいつらの言葉を信じて、リオの資格をはく奪しようとした。クズスキル持ちだからという理由でこいつが悪いと決めつけた」
お姉さんがぐっと息をのむ。
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