76話
2階層に下りたとたん、横歩きの赤い巨大蜘蛛のようなモンスターが現れる。
動きは遅いので、全然脅威ではない。
「ほい、ほい、ほーい」
スパンスパンスパーンと、サージスさんが剣を振って倒していく。
「あ、倒すんだ……」
思わず漏れた声に、サージスさんが動きを止める。
「え?とりあえずどのモンスターからもドロップするって言ったろ?」
「あー、確かに言いましたけど……。その赤い横歩きする蜘蛛もどきって、ほら……肉体の一部が残ってしまって消滅しないから、ドロップ品出さないで有名で……」
足だけが、倒したモンスターの場所に残っている。
【タラバガニの足:美味】
へ?
へ?
「何これ、なんで足だけ残ってんの?」
シャルががつがつと赤い蜘蛛もどきのモンスターの足を踏みつける。
「これが本体ってわけでもなく、すでに倒してるんだよね?」
シャルの足元、踏みつけられてる赤い蜘蛛もどきのモンスターの足には、ずっと謎の文字が表示されている。
【タラバガニの足:美味】
「美味……って、美味しいってことだよね……食べられる……ってこと?というか、モンスターの足じゃなくて、これ、食材がドロップしたって……」
いうことなのかな?
えええ?
「何?なんて言った?」
動きが遅くて逃げられるし、倒すためには初級冒険者だと甲羅が硬くて大変で、倒したとしてもドロップ品出さないからと、皆が無視するモンスター……。
サージスさんが私のつぶやきに食いついた。
「うまいだと?これが?まさか、モンスターが食えるのか?」
サージスさんの目が輝いている。
え?嘘?
食べる?いや、マジで?辞めよう、ねぇ、気持ち悪いよね?
「あー、なるほど。これはモンスターじゃなくてドロップ品か。しかし、体の一部みたいな形状のドロップ品を落とすなんて悪趣味だよな」
シャルが踏みつけていた【タラバガニの足:美味】を鞄の中に放り込んだ。
ちょ、シャルっ!持ってくの?ねぇ、持って行くの?
そりゃ、無料の食材はありがたいけれど、けれど、モンスターを食べないと駄目とか……ああ、でも、でも、もう糞とか食べてるから、今更なの?
うううう。
シャルが次々と【タラバガニの足:美味】と表示された、赤い横歩きの蜘蛛もどきモンスターの足……を、鞄に回収していく。
なんでぇー!どうしてぇー!
「でも、うまいってリオが言うんだから、間違いないだろう」
サージスさぁぁん、なんで、そんな、絶大なる信用をしているみたいなセリフをさらりと言うかな、ね、私自身が、半信半疑なのに。
ジャパニーズアイを、なぜ信じちゃうんですかぁぁぁ!
し、仕方がない……。
仕方がないんです。
「ん?リオ、なんか、宝箱が出たぞ?」
え?嘘?足以外にもドロップするの?
ずびびー。
ご覧いただきありがとうございます。
……しまった、タラバガニは、横歩きだけじゃなくて、前にも歩ける……と、思ったけれど、
モンスターはタラバガニじゃないので、問題ない。いいですか、モンスターはあくまでも赤い蜘蛛みたいなやつです。タラバガニとは一切関係がありません。
よくかんがえてみ?タラバガニが岩ごつごつの洞窟っぽいところに住んでるわけないじゃん?
……と、途中でタラバガニから、他の蟹に変更しようと思ったもののやめました。
……だって、タラバガニのでっかい足が迫力あっていいじゃん……(´◉◞౪◟◉)作者都合。