7話
「おいおい、何が起きたんだ?」
「ああ、サージスさん。すいません、すぐに追い出しますから」
サージス?
カウンターの向こうからお姉さんが飛び出してきて、私の肩をつかんだ。
「ん?坊主、どうした?なんで泣いてるんだ?」
そこにいたのは、長身の男。ダンジョンで助けてくれたサージスさんだ。
「ご、ごめんなさ……僕、もう、荷運者の仕事ができなくて……サージスさんから預かったドロップ品も、取られちゃって、返せないから働いたお金で返そうと思ったのに……僕……」
「は?ドロップ品を預かった?」
サージスさんが首をかしげている。
「ああ、もしかして、あれか。お前の鞄に突っ込んだやつな。いや、返さなくても……と、待てよ?盗られた?ドロップ品を盗られたって、誰にだ?」
サージスさんが眉間にしわを寄せて私に詰め寄る。
「サージスさん、話なんて聞く必要ないですよ。この子は横領をやらかしたんです。どうせ、S級冒険者のサージスさんに泣きつけば何とかしてくれるとか悪知恵を働かせているだけですよ。ほら、さっさと出て行くのよっ。薄汚い犯罪者。だから、無能スキル持ちは」
ドンッと背中を押される。
ギルド内にいる10名ほどの冒険者たちの視線が私に突き刺さる。
重たい足取りでギルドを出ようと出口に向かうと腕をつかまれた。
「話はまだ終わってないぞ、坊主。盗られたってどういうことだ?」
そうだ。これでうやむやにしていいわけがない。
「鞄に混ざって入れられていたので、ダンジョンを出てすぐに仕分けをしたんです」
「仕分け?数があるのに分かるのか?誰が倒したモンスターのドロップ品だって?」
サージスさんの言葉に頷く。
「はい。覚えています。それに……サージスさんが倒した吸血蝙蝠のドロップ品には特徴があって、ほとんどがアクセサリー型で小さくて軽い物。攻撃を補助するものではなく防御力をあげるような効果がついた物なので……」
私の言葉にサージスさんが頭を撫でた。
「すげーな、坊主。いや、リオと言ったな。ドロップ品を見てどんな効果があるのか分かるのもすごいが、どのモンスターがどういうものをドロップしやすいかとかも覚えてるのか」
なでなでと頭を撫でてくれる。
「横領するのに、より高価なものを見分けるためなんじゃない?」
お姉さんが、私とサージスさんのやり取りを不満げな顔で見ている。
「仕分けしていたら、荷運者としてのの雇い主が、荷運者が運んだものの所有権は雇い主のパーティーにあると言われて……僕が、運んでしまったばかりに、サージスさんがせっかく倒してドロップさせた品物を……ごめんなさい」
サージスさんが、お姉さんの顔を見た。
「おい、ドロップした品の所有権は、荷運者を雇った者にあるなんてルールはあったか?」
サージスさんの言葉にお姉さんが首を横に振った。
「いえ。他のパーティーの荷運者に荷物を運んでもらうことはありますが、所有権はドロップさせた者にあり、運び賃として売り上げの何割かを渡すことになってますけれど」
サージスが、ふぅーんと小さく頷き、もう一度私の頭を撫でた。
「じゃぁ、盗難届出すかな。俺が倒したモンスターのドロップ品、誰に盗まれた?」
サージスさんの言葉に、お姉さんの視線が食事中のロードグリの3人に向けらえた。
「クロ、あなたがダンジョンの入り口付近でドロップ品を仕分けていたという話と、返してくれと言っていたという話は、サージスさんのドロップ品のこと?」
お姉さんの言葉に、激しく頷く。
「でも、おかしいわね?なぜ、ロードグリのメンバーはそれを知らないの?S級冒険者のサージスさんの名前くらい知ってそうなものだけれど?」
サージスさんが怒ったような表情をする。
「会ってないからな。ダンジョンの中では」
「え?それはどういう?」
「こいつはダンジョンで一人だった。大量の吸血蝙蝠のモンスターに襲われていたが、周りにロードグリのメンバーは一人もいなかった」
お姉さんがまさかと小さく息をのむと、すぐにロードグリのメンバーを呼んでくるようにと近くにいた冒険者に声をかける。
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