63話
本日付け2話目
「さぁ、参りましょう。すぐ裏の武器屋はうちの系列です。はす向かいの魔法具もそうです。それから」
え?そうなんだ。すごいなぁ。きっとやり手の経営者が経営しているんだろうなぁ。
ネースさんがお店を回って店長さんにいろいろと説明をしてから買い取りカウンターに案内してくれた。
何を言っているのかは分からないけれど、話をしている途中で驚いた表情をして私の顔を見ているので、もしかしたらサージスさんのパーティーに入ったのがこんなできそこないなのかとびっくりしているのかもしれない。
でも、いいんだ。これから頑張って信用を得ていくようにするんだ。無能スキルということは覆せないんだから。サージスさんたちの役に少しでも立って、お店の人たちにも非力ながらもよくなってるって言ってもらえるように、今から頑張らないといけないんだ。
今、何を言われていようと……それは仕方がないことだから。
魔道具屋の買い取りカウンターに品物を1つずつ並べる。
「これは何?」
「はい、水系魔法スキル持ちが使えば魔法の威力を3~5あげる指輪です。火系魔法スキル持ちが使うと逆に威力を落とします」
「こっちは何?剣でしょ?武器屋に持って行く物じゃない?」
「あの、火魔法を纏わせることができる剣なので、魔道具屋に持ってきたんですけど……」
と、一つずつ説明する……って、あれ?お店の人は何か分からないの?
売るつもりの10個のアイテムをテーブルに並べたところで、お店の人がネースさんの顔をちらりと見た。
「ふっ、こりゃ確かに間違った対応すりゃぁ見限られることは間違いないな。坊主、よくわかってんじゃないか」
あ、よかった。間違ってなかったんだ。
そうか、私は試されたんだ……。そうだよね、偽物のアイテムとか持ってくる人とかもいるんだから、私がちゃんとしたものを持ってくるか……わかっていて持ってきているか試したんだよね。お店の人が知らないわけない。
私ったら失礼なこと考えちゃった。
でも、鑑定を使わなくても、お店の人は分かるんだ。そうだよね、私が分かるくらいなんだからお店の人が分からないわけないんだ。もっと、頑張らなくちゃ。無能スキルしかない私は、もっともっと頑張ってお店の人が普通にできること以上のことができるようにならないと……。
「荷運者なんてやめて家で働かねぇか?」
魔道具屋の買い取りカウンターの人が買い取り価格を提示しながら口を開いた。
え?頑張れば雇ってくれるってことかな?
「だ、だ、だめですよ」
ネースさんが慌てた様子を見せる。
そうだよね。無能スキルしかないってネースさんは知ってる……。
「うちの店長も狙っているんですから、だめです」
「うはー、そりゃ残念だが、防具屋より魔道具屋のが客層はわるかねぇぞ?」
「ま……あ、確かにリオ様に荒くれ者の相手は……」
なんだか聞こえない声で二人がごにょごにょと話をしている。けれど、私はそれどころではなくて心臓がどきどきして。
買い取り価格として提示された額が思ってたものの倍。