57話
おでこを両手で押さえるて涙目でシャルを見る。
【スキルジャパニーズアイ発動】
ああ、片目をつむってるからか。
シャルの横に【天邪鬼】え?ええ?シャルが鬼?どういうこと?
ジャパニーズアイはやっぱりさっぱり分からない。シャルが鬼なわけがないのに。頭に角も生えてないし。
「ちょっと、サージスさん、何なの?ねぇ、どういうこと?信じられないんだけど、どうして、自分は駄目な人間だって結論に達するの?」
「あー、俺にも分からん……」
サージスさんが困った顔をしてから、それから、私の頭を、いつものように大きな手で撫でた。……これ、好き……。
「困ったなぁ、リオの作ったものを食べないときっと力がでない」
え?
「あんなにおいしいものを知っちゃうと、もう何を食べても満足できなくて、ろくにご飯も食べられなくて、力が出なくて、俺はダンジョンでモンスターに倒されて死んじゃうかもしれないなぁ……リオがパーティーに入ってご飯作ってくれないせいで、死んじゃうかもしれない……」
え?
「だ、だめです、サージスさん、死んじゃだめですっ」
「じゃ、パーティー登録しような。リオがいないと死んじゃうからな?」
「は、はい。死なないでください」
ハルお姉さんが準備してくれた紙にサインをしてこれでサージスさんとシャルのパーティーに荷運者としての登録が完了。
「……リオ、お前……な、今のおかしいと思わないわけ?」
シャルが小さくため息をついた。
え?おかしい?
「リオ、いいこと、契約書にはほいほいとサインしちゃ駄目よ?今回は相手がサージスさんだったから黙っていたけれど、この先、何か契約を結ぶようなことがあったら、必ず私を同席させなさい、いいわね?絶対よ?じゃないと……じゃないと、この子、絶対騙されちゃうわぁぁぁ!!!!」
ハルお姉さんが絶叫している。
騙される?
「大丈夫ですよ。僕を騙しても得になるようなことないですし」
無能スキルしかないし。
「それに、皆いい人だから。人を騙すような悪い人はきっとドラゴンより会うことないですよ」
ハルお姉さんもいい人だ。
きっと契約に関してはギルド職員が一番いろいろ知っている。私が知らないこともちゃんと丁寧に教えてくれようとしてるんだろうなぁ。取り分のこととかも知らなかったのをハルお姉さんは知ってるから、心配してくれるんだ。
なんていい人だろう。
本当にいい人ばかりだ。
「ハルお姉さんもすごくいい人です」
にこりと笑うと、ハルお姉さんがうっと胸を押さえた。
「なんだか、私の心はすごく汚れているような気持ちになったわ……。で、ドロップ品の買い取りだけれど」
あ、そうだ。そうだ。
「はい。あの、薬草以外のものですよね、すぐ出します」
ハルお姉さんが首を横に振った。
「ごめんなさい、それが今は鑑定スキル持ちが千年草にかかりきりで、3か月ほど他の品の買い取りができないのよ」
慌ててリュックから荷物を取り出そうとしていた手が止まる。
みんな、いい人。
疑うことを知らないリオなのでした。
……うん、食べないと力でないから、サージスさん死んじゃうよね。
……なわけ、あるかーい!
(´・ω・`)