56話
「ちょ、リオ、どうしたなんで、何が、えっと、俺、怖くないよ?ああ、取り分の話とかまだしてなかったからな?5割でどう?あー、荷運び人が2人になるから、えーっと、それはむりか、じゃ、3割な?3割、リオが3割、俺とシャルが4割ずつってので手を……」
泣いている私を見てサージスさんが慌て始めた。
へ?3割?何を言っているんだろう。最低1割だったっけ。なんかハルお姉さんが教えてくれたような……。
あ、運んだものの3割っていうことかな?でももらい過ぎだよ。今日だって、高価な千年草はシャルが運んだけれど、それ以外の薬草だけだってすごい量あったし、他にもちょこちょこ金貨レベルのものがあったんだから。その3割とかもすごい金額になるよ?
「ったく、サージスさんは馬鹿なの?ねぇ、馬鹿だよね?」
シャルがあきれた声を出す。
「冒険者が自分の取り分下げてどうするの。サージスさんは5割。残りをボクとリオで半分ずつでいいよ」
「え?シャル、それでいいのか?」
「あったりまえでしょ。きっと今日だけでも1年分の稼ぎはあるよ。千年草を抜いても、いつも通りはあるんじゃない?」
シャルが取り分についての文句をサージスさんに言った。サージスさんにもっともらえと言ってるから、やっぱり3割なんてありえない数字なんだよね。いや、でも残りをシャルと私で半分ずつ?えーっと、それでも多くないかな?
シャルの声が私のすぐ目の前に移動した。
「……っていうか、何が無理なの?ボクとはうまくいかないとか?」
シャルは私の顔を両手で挟んで下を向いている顔を上に向けた。
すぐ目の前にシャルの顔がある。
「悪かったよ、口が悪いのは、いじめようなんて思ってないからな」
へ?何言ってるの?シャルにいじめられたりしてないよね?
「そうだぞ、シャルはいつも誰にでもこういう口調だ。それに、むしろシャルはリオのことがすっごく気に入ってると思うぞ。どうでもいいやつとは手をロープでつないだりなんてしないからな?何があっても一緒に転移するためにあそこまでするのはリオのことをすごく気に入った証拠だぞ?」
え?
えっと?シャルが私のこと気に入ってくれた?
シャルが口をへの字にして私を見てる。
「だ、か、ら、口が悪いのは嫌ってるからじゃない」
シャルがふいっと視線をそらして早口になった。
嬉しい。
「あ、あの……ぼ、僕もシャルのこともサージスさんのことも、大好きです」
ぐずっと鼻をすする。
「だったら、さっさと登録!」
シャルが両手で挟んだ顔をぐいっとカウンターに向けた。
「だ、だめでしゅ……。だめでしゅ……。今日はとっても楽しくて幸せで……二人と一緒にダンジョンに行けて、しゅごく嬉しかった」
泣きすぎて、鼻も出過ぎて、グダグダなしゃべり方になってる。でも伝えないと。迷惑はかけられない。
「でも、だけど、僕は足手まといになっちゃいます。シャルが言ったように、僕は弱くて、それから、サージスさんが言ったように、誰かに助けてもらわないといけないような存在で……だ、だから……二人のように優秀な人間にはふさわしくな――」
ビッシィッ。
いまだかつてないくらいの強いでこピンが額にヒット。
痛いっ!
痛みで涙引っ込んだ。
うぎゅぅ。
感想ありがとうございます。
★★★★★が広告の下あたりに表示されます。よろしければ評価してくださいますと嬉しいです。
途中で評価は変更可能なので、現時点での取りあえず続き読むよレベルの評価で構いませんので。
さて。シャルの告白も終わったわwwww