55話
いや、私も、え?なんですけど……。
「そりゃ、もうな、今までいろいろ食べてきた。こういっちゃなんだが金持ちだし自分でいろいろ材料も入手できるし、そりゃいろいろ食べてきた……その俺が、断言しよう」
なんか、何気にサージスさんが金持ち自慢し始めたけれどS級冒険者だから当然だろうけれど、なんで今?
「リオの作る料理は最高だぞ!今まで味わったことのないうまいものが次々に出てくる」
……あー。
あーーーっ!
そりゃ今まで味わったことないでしょう!
糞ドロップ品と言われる皆が見向きもしないものが材料ですから
味噌にしろカレールーにしろ、見た目はやっぱり糞ドロップ品と言われるに値する立派な見た目ですし。
やばい、どうしよう。もし材料は何かと問い詰められて……。
S級冒険者様に何食わしてるんだ!と袋叩き……。
う、うう、ば、ばれないように生きていかないと……。
ごくりと、私が唾をのみこむと、周りの冒険者たちもごくりと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
「わ、私にも、私にも食べさせて!」
ハルお姉さんの目がギラギラしている。
「できれば、一口でいいので……」
ギルド職員さんもにじり寄ってきた。
「ふひひひ、いいだろう。うらやましいだろう」
サージスさんがにやにやしてハルお姉さんにこたえる。
た、食べさせられないです、これ以上、糞ドロップだって知られたときの危険を増やすわけには……、と、震えあがっていたら、サージスさんが私の肩をポンッとたたいた。
「っと、まぁ、そんなことで、俺がリオを荷運者にするのに疑問があるやつ、反対するやつ、自分の方がふさわしいと言うやつがいれば、出てこい」
サージスさんの言葉に周りがシーンと鎮まり返ってる。
「ここにいない人間にも言っといてよ。片方が黒い目のよわっちいの、いじめるなって」
シャルが静まり返った皆にそれだけ言うと、私の背を押してギルドの中に入っていく。
「困ってたら助けてやってくれ、お礼に美味しいご飯を食べさせてもらえるかもしれないぞ~」
サージスさんの言葉に冒険者たちが激しくざわめいているのが聞こえる。
泣きそうだ。何を言われているのか……。
泣きそうな顔をしてサージさんとシャルの後ろを歩いてカウンターに向かう。
「じゃ、ハル、さっさとパーティー登録な。俺と、荷運者のシャルに、リオ追加で!」
サージスさんがギルドカードをハルお姉さんに差し出した。
「やっぱり……無理です……」
涙がほつりとしずくとなって落ちるのが見える。
下を向いているから。涙が床を揺らすのが見えた。
いやぁ、どこまでも自信のないリオ、いったい、何がどうして泣き出した?
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