54話
「これで分かっただろ?ギルドでちまちまあるかないか分からない千年草探しさせるのと、俺の荷運者として一緒にダンジョンに潜るのと、どっちがリオにふさわしい仕事か!さっさと、登録してくれ」
サージスさんがハルお姉さんに勝ち誇ったような目を向けた。
シャルが唐突に私の肩をつかんで、周りに集まっていた冒険者に私の顔を向けた。
「ほら、皆もよく覚えておくといいよ。ジャパニーズアイってスキルで片方だけ目が黒くなったリオの顔」
え?
なんで。どうして。
みんなに私が無能スキル持ちだってことを言いふらすようなことを……。
「ああそうだな。よかったな、リオ。片方だけ黒い目なんてほかにいないだろうから、絶対間違えられないぜ」
サージスさんが私の頭を嬉しそうに撫でる。
なんで、なんで。嬉しくないよ。無能スキルだって知られないで済むなら知られたくないもん。
「リオ様……」
ぼそりと声が聞こえた。
様?
「サージス様にシャル様に続いて新しい荷運者が増えた。リオ様……」
ああ、そうか。S級冒険者のサージスさんとS級荷運者といわれるシャルと一緒に行動すれば、嫌でも私という存在が目立つ。そしてあることないこと噂されるようになる。
だったら……無能スキルだとじわじわ情報が広がって、何度も何度も蔑みの目で見られるよりも、こうして一度に知れ渡り、今だけ我慢すれば済むようにサージスさんとシャルは気を使ってくれたってことかな……。
「あれだけの千年草を手に入れられたのは、リオ様の力なのか?」
「すごいな、サージス様とシャル様に認められるだけのことはある」
ぼそぼそとささやかれている言葉が、怖くて聞けない。
無能スキルなのに、どうやってサージスさんに取り入ったんだ?すぐに用無しになって捨てられるのがおちだ。役立たずに同情して雇ってやったんだろう……と、きっといろいろと言われている。
シャルが私のおでこをピンっとはじいた。
ううっ。痛いよ。後ろにのけぞって額を抑える。
「見た?リオはよわっちぃから。いじめるような真似したらどうなるか分かってるよね?」
シャルが額を押さえている私を指さして冒険者たちに話をする。
ええ、弱いってそんなこと大っぴらに言ったら、ますます荷運者の仕事がもらえなくなっちゃうよ。弱くたって、2階層までは自力で身を守れるんだからね。
恨めし気な目をシャルに向ける。
「あ、あの、その少年は一体どのような能力が……」
冒険者の一人がサージスさんに尋ねた。
ああ、これで、決定的に私のスキルが知れ渡っちゃう。片目が黒くなるだけの無能スキルだってことが……。
「くっくっく、いいだろう、教えてやろう!リオはな……」
サージスさんが、今まで見たことのないくらいのどや顔をする。
なんで、そんな自慢げな顔になって私の無能っぷりを広めようとしてるんでしょう!やめてぇぇ……。
「めっちゃうまい料理が作れる!」
「「「「え?」」」」
多くの声が同時に上がった。
いつもご覧いただきありがとうございます。
……サージスさん、お前もか……(´・ω・`)
いや、でも、美味いは正義。