51話
「えーっと、ちゃんと並んで入りますから、お願いは後で僕にできることなら……」
ハルお姉さんが、僕の首になんか札をかけた。
「これで、リオはギルド臨時職員、並ばなくたって入れるようになったわね。じゃ行きましょ」
え?
首にかけられた札をサージスさんが外す。
「冗談じゃない。リオは俺の荷運者になるんだ。その登録に来た。なんでギルドに渡さなきゃいけないんだ!」
「いくらサージスさんでも、今が緊急事態だっていうのは分かりますよね?能力のある者はギルドに緊急招集がかかっているんですっ!」
なんだか、サージスさんとハルお姉さんがにらみ合っている。
「おいおい、なんなんだあの少年。ギルドとS級冒険者のサージスさんが取り合いをしているぞ?」
「そんなにすごいスキル持ちなのか?」
スキルという言葉に思わず反応する。
どうしよう、無能スキル持ちだってばれちゃう。
「いったいリオに何を頼むつもりか分かりませんけれど、ボクたちと行動を共にするよりも大切な用事?」
シャルの言葉に、ハルお姉さんがきりりと表情を引き締めた。
「当然よ。来たるべき厄災に備えて、できるだけたくさんの千年草を手に入れないといけないんですからっ!」
ハルお姉さんが当然でしょと言わんばかりに両手を腰に当てた。
「リオ、鞄の中の薬草出して」
「え?あ?はい?え?ここで?」
シャルの言葉に驚いたけれど、よく考えればギルドの中で取り出したら、ギルドの建物の中が薬草で埋まっちゃうかもしれないから、外の方がいいのか。
「薬草出てこい」
収納鞄に手を入れて薬草と念じながら取り出す動作をする。
いったい、何体くらいのビッグキングスライムを倒したのか数も数えていなかったけれど……。
出てきた薬草は2階建てのギルドの建物と同じくらいの体積があった。
「な、なんじゃありゃー」(注*あとがき)
「あんなに薬草を集めたのか?」
「あれだけ薬草があれば千年草が何本もあるよな」
並んでいた冒険者や、騒ぎを聞きつけてギルドから顔を出した冒険者たちが、山と積まれた薬草に驚きの声をあげた。
「まてまて、あれだけ薬草があるもんか。偽薬草も混じっているんだろう」
「そうだな。素人には偽薬草と薬草を見分けるのも大変だもんな。ってことは5分の4は偽薬草か……」
え?薬草と偽薬草を見分けるなんて誰にでもできる基本的なことじゃないの?……できて当たり前だってハルお姉さんが……。
と、ハルお姉さんの顔を見ると、だばだばと涙を流していた。
「いっぱいの薬草は嬉しいけれど、これを仕分けていくのに何時間残業が……」
ああ、そうか。いくら簡単といっても数があると大変だもんね。
「大丈夫です。偽薬草は混じってません。全部薬草です」
にこりと笑ってハルお姉さんを安心させる。
「ほ、本当?」
「ああ、ビッグキングスライムのドロップ品だからな」
サージスさんがどや顔で私の頭を撫でた。
注*すいません、ちょっと読み返していて矛盾に気が付きました。
後ほど時間がある時に修正いたします。
前に出てきた【偽薬草に似てる→千年草】というのを、
【薬草に似てる→千年草】という話に変更し、書き進んでいます。申し訳ありません。
修正には前後の話のつながりの書き直しも必要そうなんで、時間がある時に……本当にごめんなさい。
いつも読んでくださりありがとうございます!