50話
「ああ、そうだな、無能スキル持ちなんて言うやつはいないよな。結局さ、スキルがどうというより、どんな結果を出してるかが重要だ」
サージスさんの言葉にシャルが小さく息を吐きだした。
「サージスさんが言うと、重みがありますね……」
「だけど、楽しみだな。今頃ギルドではどれくらいの千年草が集まってるんだろうな」
食事を終えてから、ギルドに歩いて向かう。
ギルドの外には冒険者や荷運者が行列を作っていた。4,50人ほどは並んでいるだろうか。
サージスさんとシャルの後についてギルドに入ろうとしたら、冒険者の一人に肩をつかまれた。
「おい、何抜かしてるんだよ。ちゃんと並べっ!」
「そうだぞ。俺たちは1時間以上順番を待ってるんだ」
肩をつかんでいる人以外の冒険者たちにもにらまれる。
「あ、ごめんなさいっ」
なんのための行列なのかは分からないけれど、ギルドに入るだけでも列に並ばないと駄目だったようだ。
サージスさんとシャルは引き留められることなく入って行ったのは、きっとS級冒険者とその荷運者だからだろう。
慌てて列の一番後ろに並ぼうと後ろを向くと、今度は腕をつかまれる。
「馬鹿なの?なんで一人だけ別行動しようとするの?」
シャルだ。
「あの、でも、列に並ばないといけないって……」
サージスさんが振り返った。
「ん?そーなのか?なら、並ぶか」
サージスさんとシャルが私の目の前に立ったので、さっき肩をつかんだ冒険者さんに顔を向ける。
「教えてくれてありがとうございます」
とお礼を言った。
……なんか青ざめてるけれど、ずっと並んでいて疲れてるのかな?
「あの、知らなかったとはいえ不快な思いをさせてしまってごめんなさい」
周りのさっき睨んできた人たちにもぺこぺこと頭を下げる。
「な、な、なに……サージス様のお連れの方だったとは……」
「あの坊主……いや、ご少年様は、何者?」
「シャル様と同じすごいスキルの持ち主なのだろうか?」
ぼそぼそと声が聞こえてくる。んー、小さすぎてよく聞き取れないけれど。知らなかったなら仕方がないと許してくれたのかな。
「うわわわーーー、いた。いたわぁ……」
列の一番後ろに向かって歩き出したところに、後ろからドドドドドッと駆け寄る足音が聞こえてきた。
「やっと来てくれたのね!なんでギルドに背を向けているの?」
振り返るとハルお姉さんだ。ずいぶん疲れた表情をして、半泣きの状態に見える。
「もう、シャルが連れて行っちゃうんだもん。お願い、お願いよぉ、助けて!」
ハルお姉さんは一瞬シャルに恨めし気な目を向け、すぐに私の腕を強い力でつかんだ。
「おい、どういうことだ?サージス様やシャル様でなく、ギルドの職員があの少年の手を取ったぞ?」
「よほどすごい能力の持ち主か、それともお忍びでいらっしゃっている高貴な身分の人間?」
「ああ、サージス様とシャル様が護衛についてたとか?その可能性もある」
「お、俺たち、なんか失礼なこと言った気がするんだが……」
冒険者さんたちが一層声を潜めて何かを囁き合っている。
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味噌に続いてカレーときました。
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