42話
「ったく、あと3回って言いましたよね?ボス部屋までは飛べませんよ?」
シャルがぶつぶつ言いながらサージスさんの後について歩き出した。
ロープでつながれた私も当然一緒だ。
足元に、細い剣が落ちているので、拾って鞄に入れる。ジャパニーズアイで文字が出たやつだったっけ。紫だから銀貨10枚くらいかな。
ああ、これはハイポーションだ。1つ銀貨5枚。
傷薬草も落ちてる。手のとどく範囲のドロップ品を拾って背中の鞄に入れる。
「ちょっと、何してんの、そんなの拾ったって仕方ないだろ」
シャルが嫌そうな顔をした。
「いつもの癖で……えーっと……」
今まで行っていた1層2層ではかなり価値が高い部類なんだけどなぁ。それに、モンスターを倒した人間がダンジョンの外に出ると、ドロップ品は全部消えちゃうんだよ。もったいないと……
「この傷薬草は、枝の部分に薄く赤いぷつぷつがあるので、頭皮にも効果があって冒険者に人気がないんですけれど貴族などには人気があって」
シャルが私の手から傷薬草を手に取る。
じーっとくるくる回したりひっくり返したりしながらじーっと見る。
「薄い赤いぶつぶつ?」
シャルが眉根を寄せる。
「ほ、ほら、このあたり」
シャルの眉がさらに寄った。
「全然分からない……リオ、お前やっぱり変態だな」
え?また、変態だって言われた。
なんで?
「傷薬草じゃなくて、禿げ薬草なら確かに価値はある。ほら、さっさとしまえ。ほら、ほら、サージスさんに置いてかれたら死ぬぞ」
すぐ目の前でジャンジャンモンスターを倒しながら進んでいるサージスさんの後を追いながら、シャルが落ちていくドロップ品を拾ってぽいぽいと私の背中の鞄の中に入れていく。
「ええええ、そんな、適当に……」
私が持てる量はそんなに多くはないんだから、ドロップしたものを全部運ぶことは……って、あれ?
そういえば大量に薬草入れたけれど、まだ入る……。ハルお姉さんに借りてる収納鞄すごい……。
「サージスさんのすぐ後ろにいれば安全だけど、離れたら死ぬって言ってるだろ。それとも死にたいの?ねぇ、変態リオは、死にたいの?」
ううう、また変態って……。
でも、私の代わりに拾って鞄に入れてくれるシャルは優しい。私の身も心配してくれてるし。
「えへへ」
嬉しくなって思わず顔がほころぶ。
ビシッ。
うおう、おでこが!
ダンジョンの分かれ目を右に入ると、突然モンスターが出てこなくなった。