41話
「んー、剣だな。こんな細いのは使い物にならん、紫の光ってことはレア物でもねぇだろう」
サージスさんが拾い上げてすぐにぽいっと捨てた。
……あああ、もったいない。紫色の光のドロップアイテムなら、銀貨10枚はするのに。って、銀貨10枚ぽっち、サージスさんにははした金なのかな?レア物でもないって、レア物だけしか回収しないの?
【日本刀:名刀兼定】
日本刀?名刀兼定?さっぱりわからない。
「うらうら、来たぞ、来たぞ!」
サージスさんがぶんっと太くて長くて丈夫そうな剣をぐるりと回すと、ザシュザシュザシュと、連続で3体のビッグキングスライムを倒した。
ちょっと、モンスター図鑑の記載を疑っちゃうくらい簡単に倒してるんですけど。
「あ、右」
3体倒したうちの右側が黄色く光った。
「どう見ても同じだったけど、右?」
シャルが20mほど離れた場所まで瞬時に飛んでくれる。
危険なモンスターがうようよしているけれど、これなら目的の場所まで安全に移動できる。本当にシャルのスキルはすごいなぁ。
違う、違う、違う。
「あった!千年草!」
「はい、千年草はこっち」
薬草をシャルが私の鞄にどんどん詰め込んでいる。ブツブツ言いながらもしっかりやることはやるなんてシャルはいい人だな。すごいスキルを持っている人の中には、スキルを使ったこと以外自分の仕事じゃないと動かない人もいるのに。
見つけた千年草はシャルに渡す。シャルはウエストポーチに千年草を入れていく。せっかく仕分けしたのに混ざるといけないものね。
――ということを繰り返し、かれこれ3時間?
「あー、そろそろスキル使えない。あと3回くらい」
シャルがサージスさんに声をかけた。
「おお、そうか。じゃぁ、そろそろ戻るか?」
ダンジョンの中には、無数の拾いきれなかった薬草やドロップ品。
もったいない。
「あ、せっかくだから、この階層のボスも倒してくか?」
ボス?そんなついでにお肉を買っていこうくらいの言い方で、サージスさんは何を言っているんだろう。
さっと青ざめた私の頭をサージスさんが撫でた。
「大丈夫だ。ビックキングスライムをさらにでっかくしたようなボスで動きは鈍い。入り口で見てればいいさ。危なくなったらシャルが安全な場所に飛んでくれる。せっかくだから見たいだろう?」
せっかくだとか意味が分からない。見たいって……あ……。
そうか。私は見たいとは思わないけれど、こんなチャンスはめったにない。ドロップ品も本物を見られるチャンスだ。サージスさんは私に勉強する機会を作ってくれると言ってくれてるんだ。
「ありがとうございます」
サージスさんはいい人だ。