40話
「えーっと、じゃぁ、これお願いします」
背中に背負っていたリュックをシャルに手渡す。
「はぁ?意味が分からないんだけれど?」
「せっかくなので薬草も持って帰ろうと思うんです」
シャルが嫌そうな顔を見せる。
背後でザシュッという音が聞こえた。
急いで振り返る。
光の色は紫。あの山にはない……と、思う。
「ほ、ほら、見落としてたらもったいないよね?念のため持って帰れば鑑定してもらえるだろうし……」
と、シャルに言葉を返しながら目の前の薬草を1つずつ見ていく。
違う、違う、違う、違う、違う。
ぱぱぱと、違うものを右手で左手で避けていく。ある程度溜まったものをシャルが鞄に入れる。
違う、違う、違う、違う。
ザシュッと前方で音。顔をあげて光の色を確認。違う。
「サージスさん、その山と、あっちの山とそっちの山は無いと思います。混じってしまうといけないので、まとめておいてもらえますか?」
私の言葉に、サージスさんがびっくりした顔をした。
「お?おおう、おお」
「リオ、お前馬鹿なの?何、冒険者にドロップ品回収を頼んでんの?僕たち荷運者の仕事でしょ?それに、よくまぁ、S級冒険者に」
何かシャルが言っている気がする。
ダメだ、聞こえない。目の前の薬草の選別に集中することと、サージスさんが剣をふるう音を聞き逃さないことに手いっぱいだ。
違う、違う、違う。違う。
「あっ」
あった。手を伸ばして千年草をつかむのと、視界が変わるのは同時だった。
「セーフ」
シャルが楽しそうに笑ってる。
何を見て笑っているのか視線の先を見ると、今まで私たちがいた場所に、巨大な鎌が突き刺さっていた。
巨大なカマキリ型のモンスターの鎌が。
もし、一瞬でも遅れていたら今頃私の首は……。
「見つけたんだろ千年草、どれ?……って、薬草と何が違うの?」
「あの、この葉脈が少しカーブしていて……」
シャルが薬草と千年草を見比べた。
「リオ、お前変態だな……」
え?
な、なんでですかぁーーっ!
ザシュ。
サージスさんの剣の音の方を見る。巨大カマキリ型モンスター。モンスター辞典によると、鎌の攻撃力はすさまじい上に体が硬くなかなか剣が通らない。火魔法で内部から焼き殺すか、関節の細い隙間を狙って剣を通して倒すと説明が書いてあった。
……あっという間に、サージスさんはその首の関節を切りつけ倒してしまった。
「すごい……」
「リオ、見とれてる場合じゃない」
またでこピンと思って額をかばう。【スキルジャパニーズアイ発動】って、つながれてる右手が使えず中途半端に手を持って行ったからスキルが。
紫色の光となって消えていく巨大カマキリ型モンスター。
あれ?紫色がおかしい……?いつもの色と違うような、少し青っぽい?と思ったら、【江戸紫】と一瞬表示されて消えた。
何?江戸……紫?本当謎の言葉ばかりで、ジャパニーズアイは役に立たない。
光が消えると何か細長いものがドロップした。