4話
「なんだ?」
「あの、えっと、もしかして、吸血蝙蝠のモンスターから助けてくれたんですよね。ちょっと意識が混乱していて。お礼の言葉が遅くなってすいません。ありがとうございました。」
本当に私は駄目な人間だ。あんなにいた吸血蝙蝠がいなくなって、男の人が立っている。
大丈夫かと声をかけてくれたんだ。私を助けてくれたに決まってる。そんなことに頭が回らないなんて。
「これ、吸血蝙蝠のドロップ品です。攻撃力が3上がる指輪だと思います」
売れば銀貨10枚くらいだろうか。
「何?見て分かるのか?坊主は鑑定持ちか?」
ドキリと心臓が波打つ。
スキルの話は……ふれたくない。
「違う、その、いろいろドロップ品については勉強して……。鑑定も使えないから、覚えるしかなくて。だから、えっと……」
「ふぅーん。頑張ったんだな」
え?
頑張った?
鑑定スキルがないんだから、荷運者になるためには必要なことで……がんばったわけではないんだけど。
気がつけば男の人が、ドロップ品を拾うのを手伝ってくれていた。鞄の中に詰め込んでいる。
ああ、だめだ。全部詰め込まれちゃった。さっきの指輪も。
「あ、あの、あなたの倒したモンスターのドロップ品が混じって……」
「坊主が全部持っていけ」
「え?」
くれるってこと?って、違う、私は荷運者だ。運んでほしいってことだよね。
「な、名前を教えてください」
「ああ、俺はサージス。坊主、お前は?」
「ぼ、僕の名前は……」
クロ。
周りの人間は私のことをそう呼ぶ。
片目が黒いから。クロ。だけど、私の名前は……。
「リオ……」
青くてきれいな花の名前。リオア。お母さんが私の青い目を見てつけてくれた名前。
「そうか、リオ。悪いな。本当は出口まで送って行ってやりたいが、時間がなくてな」
「あ、謝ることなんて、助けてもらえただけでも……」
でもサージスさんに託された荷物を一人で出口まで運べるだろうか。
今いる場所は、ダンジョンの第2階層だ。さっきのように時々恐ろしいモンスターも出る場所。
不安そうな顔をしたからだろうか。サージスさんが私の頭に手を置いた。
大きくて暖かい手。
「代わりにこれをやるよ。ダンジョンの出入り口まで一瞬で戻れる腕輪だ」
「え?そんな高価な物」
確か金貨10枚はするはず。
「遠慮するなというか、時間がないから、素直に受け取ってくれ。昔モンスターーを倒したらまとめて10個ほど出てきたやつだから、まだたくさん持ってる。じゃあな、リオ!」
サージスさんは、私の腕に銀色の丸い石の着いた細い腕輪をはめると、石をちょんっとつついた。
あっと声をあげる間もなく、すぐにダンジョンの入り口のすぐ外に立っていた。
まとめて、10個出てきたっていうことは、移動だけじゃなくて身に着けている人間に連絡も取れる機能がついてる……もっと高価な品。
腕にはまっている腕輪をまじまじと眺める。
「そういうことか!」
私が運んだドロップ品を後で回収するために、連絡が取りたかったんだよね。
急いで背負っていた鞄を下ろして中身を広げる。
「これは、サージスさんの。こっちもそう」
仕分けを開始する。
吸血蝙蝠は相当な数いたから、ドロップ品もそれなりの数があった。指輪やペンダントなど小さいものが多かったから持ってこられた。
「あ、宝箱もある」
手のひらサイズの小さな宝箱。開けると、中には残念な色合いの物体。通称「糞」と呼ばれるものが入っていた。
もちろん、ハズレ宝箱で誰も持ち帰らない。あの騒動で鞄に詰め込まれたんだ。
宝箱には時々高価な品も入っている。期待しながら開いて中身が「糞」だったときのがっかり感をなんと表現すればいいのか。
糞にがっくりして頭を下げると、足らりと血が垂れてきた。目に入らないように慌てて右目をつむる。
「ああ、仕分けより先に手当しなくちゃ」
【スキルジャパニーズアイ発動】
ん?頭の中で声が聞こえたかと思うと、左目で見る「糞」に文字が浮かび上がる。
【赤だし味噌:調味料】