39話
「おお、来たか、シャル、リオ。おっと、早速お出ましだ!」
サージスさんの背中が見える。その向こうに、5mもあろうかという巨大なスライムが現れた。透き通った薄緑の巨体がふよふよと揺れている。動きは鈍いが、防御力が高くて倒すのが困難。ダンジョンで遭遇したらさっさと逃げるのが定石だって書いてあった。ドロップ品は薬草がおよそ2000。1体倒しただけで偽薬草なしの薬草が2000も手に入るなんてすごいと思うけれど、倒す労力に見合わないそうだ。そもそも薬草なんて1層2層などの浅層で取れるからわざわざ深層まで潜って取るようなものじゃない。
ザシュッっと、小気味よい音とともに、ビッグキングスライムが真っ二つになった。
え?あれ?
モンスター図鑑だと、倒す手間を考えると無視して進んだ方が……って……。
「ほら、ぼやぼやすんな」
ビッグキングスライムが紫色に光りながら姿を消すと、大量の薬草が落ちてきた……のを見ている間に、気がつけば薬草の目の前にいた。
「え?あれ?」
「ボクがスキルで飛んだんだ。早く薬草から千年草を探せ!ぼやぼやすんな!」
額を指ではじかれる。うぐ。ジャパニーズアイによるところのでこピンされた。
「ほら、次、来たぜ!」
サージスさんが再び出現したビッグキングスライムをまたしても一刀両断。
紫色の光がうす黄色に一部を変化させながら姿を消した。
「あれだ」
目の前の薬草の山を無視して、サージスさんが倒したばかりの新しい薬草の山に向かって駆けだす。
いや、駆けだそうとして、グイッと右手が置いていかれた。
慌てて振り返ると、そういえば、シャル君と手をロープでつながれていたんだった。
「リオ、どういうつもり?」
「この薬草の山には千年草はたぶんないです。あっちにはある」
「はぁ?何言ってんの?まさか、一瞬で全部チェックしたとでもいうの?」
シャルが不審げな表情を見せる。
「あー、いえ、たぶんです。たぶん。光り方が違ったので」
「何言ってんの?一緒でしょ?」
一緒?
「いえ、確かに、あっちは紫の中に少しだけ黄色が混じっていたと」
私の言葉にサージスさんが振り返った。
「は?ぱって雷みたいに一瞬光るだけなのに、そこまで見えるのか?」
あれ?見えるよね?色なんて一瞬でも分かると思うんだけれど?特にダンジョンの中は火の光がなくて少しくらいからよく見えると思うんだけど?
「ほら、そういうなら千年草を見つけてみろ」
瞬きする間に、また移動した。いつスキルを発動してるんだろう?シャルはすごいなぁ。