37話
「あーシャル、待て待て、そもそもリオは……困っていると思わないタイプだ……」
え?
サージスさんが間に入ってくれたけれど、困っていると思わないタイプって何?困ったなぁというときは困ったって思ってますよ。今だって、二人に糞を使っていたのばれたらどうしようって困ってるよ。
「パーティーに、モンスターのおとりとして置いて行かれた時も、横領の冤罪をかけられたときも、防具屋でぼったくられそうになった時も……、なんか、ぼんやりしてた」
シャルからまるで湯気が立ち上っているように見える。こ、怖い。怒りMaxだ。
うひー。
「サージスさん、今から北ダンジョンの100階層に行って。着いたら連絡」
「は?今からか?いや、さすがに100階層まで行くには、3時間はかかるぞ?何しに行くんだ?」
100階層って、ええええ?
「北ダンジョンは80階層を過ぎると出てくるモンスターがけた違いに強くて、A級パーティーでさえ1階層進むのに1時間はかかるっていうところですよね?100階層まで3時間?え?え?」
目を白黒させていると、シャルが白けた目で私を見た。
「サージスさんのこと、知らないの?」
「あの、S級冒険者だって知ってます、あ、知りました。えっと、S級ってすごいんですよね?」
シャルが私のでこをビシッと指ではじいた。【スキルジャパニーズアイ発動】思わず片目をつむってしまったためスキルが発動した。【でこピン】ん?
今の指ではじくのはでこピンっていうのか。
……あ、シャルにも文字が【ヤンデレ】。
ヤンデレ?なんのことだろう?
「じゃぁ、3時間後。リオ、お前も行くんだからな?準備しておけよ」
「は、はい」
元気に返事をすると、目の前から二人の姿が消えた。シャルはどっかにスキルで転移したのか。サージスさんはすごいスピードで飛ぶように走り去った。
準備?え?私も、100階層に?3階層がやっとの私が?
「こ、こうしちゃいられないっ!」
北ダンジョンの100階層について調べないと。
まずはギルドに向かい、北ダンジョンについての本を見る。3時間しかないって、どうしよう。覚えられるかな。
100階層にでるモンスターの種類。メインが3種類、それからレアが3種類。上下階層からのはぐれものもいるから、上下階層のモンスターも覚えておかないと。
次に、モンスター辞典で、モンスターの特徴を調べる。弱点、攻撃の型。それから一番大切なのはドロップ品の種類。似たものとの見分け方。
ああ、見たことのないドロップ品も多い。どうしよう。見分けられるかな。一度でもいい。実物を見て覚えたい。