35話
私みたいな無能スキルしかない下っ端荷運者は、厄災といわれても役に立たないからいつも通り過ごすしかないんだけれど。って、そんなこともないのかな?
モンスターがダンジョンからあふれ出した時に逃げる場所だとか食料不足になったときに食べる者だとか備えないと駄目かな?
「リオが第一発見者だ。千年草の」
正確には、ドロップしたものをギルドに持ち込んだ人が第一発見者じゃないかな?
それとも鑑定した人かな。
だって、私は知らなかったもの。
シャルスさんは一瞬目を見開いて驚いたような表情をしたけれど、すぐに不愉快そうな顔に戻った。
「本当、ボク、大っ嫌いなんだよね。頑張る頑張る言って、頑張らないやつも、頑張って成果を出してるのにまだまだ頑張りが足りないとか言うやつも。もっと自信を持って自慢しろって。見ていてイライラする」
何やらぶつぶつとつぶやいているけれど、よく聞き取れなかった。
ただ、なんだか……怒ってる、怒ってるよね……。えーっと、私、やっぱり辞退……。
「リオ、シャルスだ。シャルでいい」
シャルスさん……シャルが手を出した。
こ、これは、握手ってことかな?仲間として認めてくれるっていうこと?
「はい。シャル。リオです。16歳で、来月17になります。荷運者になってまだ3か月と少しです。頑ば……えっと、よろしくお願いしますっ!」
「なんだぁ、リオ17歳?13歳くらいだと思ってた。なんだ、シャルス、お前のが年下じゃないか!」
サージスさんの言葉にシャルがむすっとすねたような表情を見せる。さっきまでの怒っていた顔とは違うことに少しほっとする。
「ボクも16だから、今は同じ年だ」
シャルが私の手をがしっと乱暴につかんで、口元にもっていった。
ええ?と驚いている間に、シャルが私の小指を口に含んで、がじりと噛んだ。
「痛っ」
びっくりして手をひっこめると、シャルの唇に、私の小指から流れ落ちた血がつく。
それを、シャルがぺろりと舐めとった。
「おい、シャル。説明してからマーキングしろって。驚くだろうが」
マーキング?
「シャル、こいつのスキルは影移動。あー、転移系スキルだ。目に見える影から影に瞬時に移動できる。目に見えない場所の影にはマーキングしてある場所なら来られる」
「血でマークする。サージスさんがどこに移動しようと、すぐに近くに行くことができる」
そういえば、さっきサージスさんが腕輪で話しかけたらいつの間にかシャルが来ていたけれど……。
「すごい、なんてすごいスキル……」