34話
シャルスさんの言葉にサージスさんがニヤリと笑う。
「ご馳走ね。くく、これうまいよなぁ。シャルス、相当味にはうるさい癖に、ご馳走っていう位うまいだろう?」
シャルスさんがにやにや笑うサージスさんにいやそうな表情を向けた。
あれ、S級冒険者で雇い主のサージスさんにそんな顔見せちゃうんだ。
「まさか、ご馳走食べさせておけばボクが黙るとか思ってないですよね?」
えっと、シャルスさんが怒ってるのは、私を荷運者にするってサージスさんが言ったからで、それで、ご馳走で懐柔すると誤解したから……だから、えーっと、あーっと。
「あ、あの、誤解です、誤解なんです。これ、ご馳走なんかじゃなくて」
って、口を開いてやばいと思った。
糞ですなんて言ったら、余計に怒らせちゃうんじゃ……。
「肉はサージスさんがさっき獲ってくれた猪で、味付けはダンジョンのドロップ品です。武具や防具じゃないから見向きもされないハズレ物です。あと、その木の実とあっちの木の葉です、あのへんのきのことかも……使いましたけど……だからご馳走じゃないですし、サージスさんはご馳走を食べさせて誤魔化そうなんてそんなことはしなくて……」
私の言葉に、シャルスさんの眉のしわが深くなった。
「このうまいやつ、浅層ダンジョンのドロップ品らしいんだよ。また、食べたいだろう?だから、リオに回収してもらう。他の荷運者じゃ見分けられないドロップ品だ」
にやにやと勝ち誇ったような顔をするサージスさん。シャルスさんの顔が一層ゆがむ。うひー一触即発。
「鑑定スキルもないのに、なんで見分けられるの?」
って思ったらシャルスさんが私をにらんだ。
「あの、僕、無能スキルだから荷運者として役に立てるように、頑張って覚えまし……」
しまった!
頑張るって嫌いだって言ってたんだ。
慌てて両手で口を押える。
ど、どうしよう。やっぱり、私、サージスさんのパーティーの荷運者は辞退したほうが……。
「千年草の話は聞いたか?」
サージスさんが私の頭の上に手を置いた。
逃げるなってこと?でも、でも、めちゃシャルスさん私をにらんでるんですけど。
「ええ。もちろん。もうギルドは大騒ぎですよ。鑑定持ちの荷運者はギルドに強制召集がかかっていますし、浅層での薬草採取に皆目の色を変ええますよ……ああ、皆じゃないですね。A級以上の冒険者はこれから起きることを警戒して準備をはじめていますね」
そうなんだ。もう千年草の話は広がって、それぞれ動き出しているんだ。
そりゃそうか。1000年に一度の厄災が起きる前触れと言われたら……準備しないとだめだものね。