31話
「獲って来たぞ」
ドンッと、目の前に置かれる猪。その後ろに立つサージスさん。
【仁王立ち】……仁王立ち?っていうか、まだスキル発動してるんだ。
「あの、獲ってきたって……」
どう考えても、目の前の猪を取ってきたってのは分かるけれど……。
いや、そんなに食べられないよね。どうするつもりなの?
「リオが材料を獲って来るって言っただろう?お前だけに任せるわけにはいかないからな」
【どや顔】……サージスさんのにかっと、自慢げに笑う顔の横にジャパニーズアイの文字が。
「……あの、確かに採ってくるとは言いましたけれど……。僕が言ったのは、山菜やきのこを採るという意味で……。肉類は、サージスさんが出してくれた分で充分な量があるので……」
サージスさんが驚いた顔をして、鍋と朴葉味噌を見る。
「これで、充分?あ、そ、そうか?うん、あー……。リオ、お前もっとたくさん食べないと大きくなれないぞ」
頭をぐりぐり撫でられる。はい、そろそろ慣れてきました。
「そろそろ食べられると思います。どうぞ」
鍋から自分の分をコップに注ぎ残りの鍋をサージスさんに手渡す。それから朴葉味噌の焼いた肉は食べやすいように木の枝を突き刺した。
まずは、肉から行くタイプみたいで、サージスさんが肉を食べた。
私も慌てて肉をかじる。未知の料理だというのに味見もしてないので。
「「う」」
サージスさんと私が、ほぼ同時に声をあげた。
「うめぇ、これ、なんだ、いや、ピリっとして肉、うめぇ、いや、何コレ、マジで、うめぇ」
よく噛まずに肉を飲み込むと、サージスさんは木の棒を次の肉に刺して口に入れた。
すごい勢いで朴葉味噌の肉を食べていくサージスさん。
うん。気持ちは分かる。こんなに美味しいとは思ってなかった。
だって、その辺に落ちてた葉っぱと木の実を使ったんだよ?山椒っていったけ。あとでもうちょっと獲っておこう。
「美味しいですね」
と、感想を述べると、サージスさんが空になった朴葉を見てハッとなった。
「すまん、つい俺一人で……ちょっと待ってろ」
いえ、大丈夫ですよ。いつも肉とかそんなに食べないので、1切れだけでも私にはご馳走でしたし……と、言う間も与えず、サージスさんが猪を光速でさばきだした。
えーっと……。
「ほら、追加の肉だ」
また、自慢げにニカッと笑うサージスさん。今度は文字は表示されない。ああ、ジャパニーズアイのスキルの効果が終わったのかな?
追加って、別にいらないんだけど……。
「遠慮するな」
サージスさんが頭の大きさくらいある肉の塊を差し出している。
遠慮というわけでもないんだけどと、受け取るのを躊躇していると、サージスさんが口を開いた。