30話
でも、味噌は美味しかったし、試しに入れてみたいんだけど……。
うん、隠れて入れよう。そうしよう。だって、このままじゃ肉ときのこだけで野菜無しのスープ……いや、味噌汁になっちゃうし。母さんがちゃんと野菜も食べないと駄目だって言ってたから。
この近くの山菜はさっきとっちゃって、食べられそうなものは見つからないし。
なんとかゴボウというものを手に川へ走る。綺麗に洗って、元の形が分からないように、そぐようにして薄っぺらくカットして鍋に入れる。キノコも軽く洗ってちぎって鍋に入れる。水を汲んで、戻って鍋を火にかけ、貰った肉の塊も薄くスライスして入れる。
あ、いつも薄い肉しか食べたことないから薄くしちゃったけど、もしかしてサージスさんとかだと、分厚く切った肉を豪快に焼いて食べるとかの方がよかったのかな?というか、渡された肉、両手にどーんという量だったので、余ってるんですよね。どうしようかな。
味噌もいれて、混ぜ混ぜ。あとは火が通るのを待つだけだ。サージスさんどこ行ったんだろう?
ああ、そうだ。器はまた私はコップで、サージスさんは鍋から食べてもらえばいいかな。スプーン代わりの枝だけ探そう。
と、足元を見ながら歩くと、大きな落ち葉に文字が浮かんだ。【乾燥した朴の葉:朴葉味噌につかえる。上にきのこ、薬味、肉を置いて焼く】
「ただの、大きな葉っぱ……に、なんでジャパニーズアイが反応したんだろう?だけど、そうか。味噌をつけて肉を焼くのか。薬味?ネギとかだっけ?ないけどどうしようかな……まぁいいや。まるっきり味がないわけじゃないもの。味噌があるだけでもきっとおいしい。それよりスプーンスプーン」
足元を見ればまた文字が。小さな実に表示されてる。【山椒:殻をすりつぶして使う。薬味】
薬味?
小さな粒を一つ拾う。
「えーっと、殻を……って、これ一つじゃ足りないよね?」
見上げると、また文字。【山椒の木:驚き桃の木山椒の木】
「へ?えーっと、また、意味が分からない……」
けれどとりあえずぶら下がっているカラカラになったはじけた実をいくつか手にとり、ちょうどいい枝と葉っぱを持ち帰る。まだサージスさんの姿はない。
火にかけた鍋が噴きこぼれそうになっていたので、少し火から遠ざける。
朴葉とやらに、肉を乗せ、味噌と山椒の殻を石ですりつぶして混ぜたものを肉に刷り込むようにして塗り、きのこと一緒に焼く。
鍋に【猪鍋:豚汁風】、焼いた肉に【朴葉味噌:岐阜の郷土料理】と出ている。
岐阜?……本当に訳の分からない文字がたくさん出てくる。……でも、もし、この朴葉味噌が美味しかったら、ジャパニーズアイのおかげ。
少しは……ほんの少しは役に立つスキルなのかもしれない……。