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3話

 マイルズくんの声に顔をあげると、頭上に大型の蜘蛛の形のモンスターが下りてきていた。

「た、助けてっ」

 かすれた声で助けを求める。

 このモンスターに噛みつかれると、全身がはれ上がり3日は高熱に苦しむ。

「あははは、見ろよ、クロのやつ、今にも漏らしそうだぜ、なっさけねー」

「クスクス、本当あんな弱いモンスター、私なんて7歳の時には倒せるようになったわ」

 冒険者なら……ちゃんとしたスキルを持った者なら、子供でも倒せるモンスター……。

 私は、私はクズ無能スキルしかないから……。

 目に浮かんだ涙が頬を伝う前に、蜘蛛の足が顔の前に延びてきた。

「助け……て」

「いいですよ、助けてあげましょう。ですが、ただでというわけにはいきませんねぇ。今日の報酬は無しで手を打ってあげますよ?」

 いつもは銀貨1枚。今日は銀貨10枚は報酬がもらえるはずなのに。10枚あれば、家にお金を送ることができたのに……。

 お母さん、お父さんを助けられるのに……。

 マイルズくんの助けてあげるという親切な言葉に、いろいろなことが頭をよぎって即答できずにいた。

「なに、あれ?」

 アリシアさんが私の後方を指さす。

「おい、まずいぞ!逃げるぞ!」

 突然、フューゴさんが大声をあげた。

 何?何が起こったの?

 目の前に迫っていた蜘蛛の足が消える。巨大蜘蛛のモンスターは何かに怯えたように、糸を伝って天井に張り付き、すごいスピードで逃げていく。

 助かった?

 これで、今日は銀貨10枚。

 散らばったドロップ品に手を伸ばしたその瞬間、目に吸血蝙蝠のモンスターの群れが映った。

「た、助けてっ!」

 蜘蛛のモンスターどころではない。吸血蝙蝠に血を吸われれば命を落としてしまう。

 立ち上がろうとしたけれど腰が抜けてすぐには立ち上がることができない。

「たすけて、助けてっ」

 3人がいた方向に目を向けると、すでに出口に向かって駆けだしていた。

「クロが悪いのよっ!スキル発動【火炎の壁】」

 アリシアさんが放った魔法は、私と3人を分断するような炎の壁を作り出す。

「荷運者でしょう、ちゃんと荷物を回収してくださいよ」

 マイルズくんの言葉が聞こえる。こんな時にも、私が収入を得る心配をしてくれるの?

「流石にあの数は、俺たちもやばいぞ」

「ばかフューゴ!だから、あれをおとりにしたんじゃない」

「役立たずの無能の唯一の有効的な利用法ですよ」

 3人の声が遠ざかっていく。何を言っているの?吸血蝙蝠の羽ばたきの音が大きくて、聞こえない……。

 ガツッと音と衝撃が頭に走る。

 吸血蝙蝠のモンスターの鋭い爪先で頭をつかまれたんだ。爪が食い込む……。

 目の前が血の色に染まる。

 ああ、目に血が……。右目はきれいな青色なんだけれどな。

 慌てて右目をつむり、これ以上目に血が入らないように袖でぬぐう。

 【スキルジャパニーズアイ発動】

 頭の中に声が響く。

「おい、お前、大丈夫か!生きてるか!」

 意識が遠のきぼんやりした私の両肩をつかんで揺さぶる者がいる。

「え?」

「ああ、よかった生きてたか。なんだ、どうして坊主は一人でこんなところにいるんだ?」

 坊主?ああそうか。私は16歳だけど、男の恰好をしているともう少し幼く見えるんだ。坊主って私のことだよね。

 目の前に、大きな体の30歳前後の男の人の姿がある。高そうな鎧と剣を身に着けている。

 周りに散らばっているドロップ品を見まわし、男の人がつぶやいた。

「っと、なんだ、お前、荷運者か?」

 男の人の顔を見ると、白い文字が浮かび上がる。【西洋風イケメン】

 何?西洋風ってどういうこと?イケメンってどういう意味?

「パーティーメンバーはどうした?まさか、吸血蝙蝠にやられたのか?」

 そうだ。吸血蝙蝠に私、襲われて……。

「あの、僕が、荷物をばらまいちゃって、拾えって……ああ、そう、拾わなくちゃ」

 慌てて散らばっていたドロップ品をかき集める。

 あれ?これ……?

 一つを手に取り、男の人に差し出した。

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