27話
小刻みに震えだす。
謝れば許してくれるだろうか。
サージスさんはいい人だから許してくれるかもしれないけれど、私が困っているときに何度も何度も助けてくれたのに、私は、私は……恩をあだで返すようなことを……。
思わずぽろぽろと涙が落ちる。
「あー、すまん、悪かった、返事を待たずに勝手に食べちまって、いや、あの、そう、買って返すよ、な?」
サージスさんがうろたえている。
「ちょっと、待っていてくださいっ!」
サージスさんを座らせ、木の枝を消えかかっていた火にくべて空気を送り、火を大きくする。
川の水を鍋にくんで、サージスさんに見つからないように水に味噌を溶かす。スプーン2杯を溶かしてから、火にかける。
「おお、いい匂いだなぁ」
サージスさんが具のない、ただ糞を溶かし入れただけの汁を見て顔を緩める。
ごめんなさい。ごめんなさい。
ふつふつと沸騰したところで、火からおろしてコップに移して、少し冷めるのを待つ。
……私も飲む。糞汁。サージスさんだけに飲ませたわけではないと……せめてお詫びする前に……。
目の前で飲んでみせる。
ごくり。
「あれ?おいしい……」
ごくごく。
これ、普通に美味しい……どころか、塩入れたお湯と比べたら、味噌入れたお湯って、具がなくてもこれだけで美味しい。
コップに入れた味噌汁を飲んでいる私を、サージスさんがすごくうらやましそうに見ている。
えーっと。
「の、飲みます?」
糞汁だけど。
冒険者が勝手に糞と呼んでいるだけで、味噌という調味料だから大丈夫だよね。だよね……。だ、よ、ね……?
知られなきゃ大丈夫。私もこれからも使って飲むし。目の前で私だけ飲むのって、逆にサージスさん、気を悪くしそうだ。
「え?いや、いいのか?だって、その、貴重な……」
「大丈夫です。えっと、無料です」
「は?」
「モンスターを倒したドロップ品で、えーっと皆がいらないという物なので……売れない物で……」
サージスさんがああと納得したように頷いた。
「千年草を見分けたもんな、リオは。これも他の人が見分けられない特別なヤツってわけか」
ち、違う……けど……。
思わずサージスさんから視線を逸らす。
「ああ、大丈夫だよ。ドロップ品を横領したとか思わないからな。他の人にとって価値のない物なんだろ?いらないっていう物をもらうのは横領とはいわねぇからな」
ああ、そうか、横領……その考えはなかった。
そうだ。いくら糞で他の人はいらないと言っても……パーティーについて荷運者としてドロップ品を運ぶなら、勝手に物を持ち帰るなんて駄目だよね。その分他の物を持って帰ることができたって言われたら言い訳できない……。