表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/209

27話

 小刻みに震えだす。

 謝れば許してくれるだろうか。

 サージスさんはいい人だから許してくれるかもしれないけれど、私が困っているときに何度も何度も助けてくれたのに、私は、私は……恩をあだで返すようなことを……。

 思わずぽろぽろと涙が落ちる。

「あー、すまん、悪かった、返事を待たずに勝手に食べちまって、いや、あの、そう、買って返すよ、な?」

 サージスさんがうろたえている。

「ちょっと、待っていてくださいっ!」

 サージスさんを座らせ、木の枝を消えかかっていた火にくべて空気を送り、火を大きくする。

 川の水を鍋にくんで、サージスさんに見つからないように水に味噌を溶かす。スプーン2杯を溶かしてから、火にかける。

「おお、いい匂いだなぁ」

 サージスさんが具のない、ただ糞を溶かし入れただけの汁を見て顔を緩める。

 ごめんなさい。ごめんなさい。

 ふつふつと沸騰したところで、火からおろしてコップに移して、少し冷めるのを待つ。

 ……私も飲む。糞汁。サージスさんだけに飲ませたわけではないと……せめてお詫びする前に……。

 目の前で飲んでみせる。

 ごくり。

「あれ?おいしい……」

 ごくごく。

 これ、普通に美味しい……どころか、塩入れたお湯と比べたら、味噌入れたお湯って、具がなくてもこれだけで美味しい。

 コップに入れた味噌汁を飲んでいる私を、サージスさんがすごくうらやましそうに見ている。

 えーっと。

「の、飲みます?」

 糞汁だけど。

 冒険者が勝手に糞と呼んでいるだけで、味噌という調味料だから大丈夫だよね。だよね……。だ、よ、ね……?

 知られなきゃ大丈夫。私もこれからも使って飲むし。目の前で私だけ飲むのって、逆にサージスさん、気を悪くしそうだ。

「え?いや、いいのか?だって、その、貴重な……」

「大丈夫です。えっと、無料です」

「は?」

「モンスターを倒したドロップ品で、えーっと皆がいらないという物なので……売れない物で……」

 サージスさんがああと納得したように頷いた。

「千年草を見分けたもんな、リオは。これも他の人が見分けられない特別なヤツってわけか」

 ち、違う……けど……。

 思わずサージスさんから視線を逸らす。

「ああ、大丈夫だよ。ドロップ品を横領したとか思わないからな。他の人にとって価値のない物なんだろ?いらないっていう物をもらうのは横領とはいわねぇからな」

 ああ、そうか、横領……その考えはなかった。

 そうだ。いくら糞で他の人はいらないと言っても……パーティーについて荷運者としてドロップ品を運ぶなら、勝手に物を持ち帰るなんて駄目だよね。その分他の物を持って帰ることができたって言われたら言い訳できない……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 絶対記憶 vs 日本眼 どっちが勝つのか!? (いやいや、連携でしょ) 現状、絶対記憶の方が上回っている感じ (千年草の災い対策で大騒ぎになっているのは、この物語としては外伝というか場外…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ