25話
……それに、見た目がね。これが、赤い粒粒とかならもう少し、チャレンジしてみようと思うんだけれど。
でも、もしこれが本当に調味料ならば……。塩も買わずに済むならお金が貯められる。なんていったって、通称「糞」は私が荷運者として仕事ができる範囲のモンスターでも10日に1度くらいは目にするドロップ品なのだ。
「うん、ちょっとだけ、試してみようかな……」
鍋の中身は半分ほどに減っている。ある程度お腹も満たされてるし、もし、失敗だったとしても、ショックは小さい……?
木の枝のスプーンで味噌を1さじ入れてぐるぐると混ぜる。
量も分からないけど……。スープの色が、茶色になる。
勇気がいるけれど……チャレンジ……。ゴクリと唾を飲み込む。
あー。糞スープ……じゃない、味噌を入れたから味噌スープ?【味噌汁:薄味】
へ?味噌汁?薄味?ジャパニーズアイがまだ発動しているようで、文字が浮かび上がる。もうちょっと入れないと味が薄いっていうこと?
もう1さじ味噌を入れて混ぜる。【味噌汁:山菜入り】
表示が変わった。……食べごろなのかな?
鍋を火からおろす。
ガサリと背後で音がして、振り向く。
「おう、なんだリオか。よく会うな」
「サージスさ」
「うはははは、ははは、それ、お前、それっ!それ、それ!」
名前を言い終わらないうちに、大きな体を二つに折り曲げ、腹を抱えてサージスさんが笑い始めた。
「それって……」
サージスさんが指をさしているのは、どうかんがえても雪平鍋。味噌汁である。
そんなに笑うってことは、まさか……。
通称「糞」を入れたのがばれた?
そして、それを食べようとしてることを笑われているんじゃ……。
やっぱり、やめておけばよかったかな……。
「あはは、まさか、鍋、鍋にしちゃうとは、兜を鍋に……」
え?笑っている理由はそっち?
いや、だて、ジャパニーズアイには鍋って表示があったんだし……そこまでおかしなことなのかな?
「面白いやつだな。お前がレアドロップ品だって言ったんじゃなかったか?」
サージスさんが正面にまわて頭をぐりぐりと撫でる。
サージスさんの頭の上にはすでに土鍋はない。
「かもしれないと思っただけで……その、僕は、前から鍋が欲しくて……」
「ぶっ。面白いな。そうか、レアドロップ品だからほしかったわけじゃなくて、鍋に使えるものが欲しかったのか。だったら、ソレ売ればいい鍋が買えると思うぞ」
サージスさんの言葉に首をかしげる。
「売る?でも、銀貨1枚で買ったものだし、売れないですよね?」