23話
「そ、そんな……」
店主の顔色が悪くなった。
「じゃ、いい買い物できたよ、ありがとうよ!」
「ままま、ま、待ってください」
サージスさんが店を出て行くので、私もその後ろをついて出て行くことにした。
店主がサージスさんを呼び止めている。
「に、荷運者なんてやめて、うちで働きませんか?」
と、思ったら、腕をつかまれた。
「え?ぼ、僕?」
引き留められたのはどうやら私の方だったみたいだけれど。
なんで?……ま、まさか……。
僕の買ったものも、本当は金貨何枚もする価値のあるものだって思い直したから、その代金分働いて支払えってこと?
で、でも、銀貨1枚でいいって……今更金貨何枚もするからって言われても……。
「あ、あの、ご、ごめんなさいっ」
頭を下げて逃げるようにして店を後にする。
「あー、残念……」
「いい勉強になったろ。スキルに頼り切るのがいかに危険かって」
店主とサージスさんが後ろで何か話をしていた。サージスさんが言質を取ったって言ってくれてたからそのことかな。
神父様は、せっかくだからとモンスターやダンジョンのことだけじゃなくて、国のことも知っておきなさいと教えてくれたことがある。
この国は大陸の西側にある中程度の大きさの国らしい。
東側に大きな国と、小さな国が3つ。北に小さな国が2つと中くらいの国が1つ。全部で8つの国が大陸にある。
それぞれが特色のあるダンジョンを持つことで、小さい国も大きい国もそれなりにうまく共存しているらしい。戦争して国が疲弊するくらいなら、ダンジョンでドロップ品集めて国を豊かにしたほうがいいということで戦争もここ300年ほどないらしい。
戦争って何だろうと神父様に尋ねたら、そうじゃな。知らないまま一生を終えるといいなと笑っていて教えてくれなかった。国と国が喧嘩することじゃよと言っていたので、喧嘩は確かにない方がいい。
国の真ん中あたりに王都がある。今いる街は、王都の南側にある、王都の10分の1くらいの大きさの街だそうだ。私の住んでいた町に比べたらずいぶん大きいのに、王都はこの10倍もあるんだとびっくりした。
街のさらに南側に小さな森があり、森の中にダンジョンの入り口となる洞窟が3つある。
「ふふ、ふふふふ」
いつも、ダンジョンの入り口まで移動しているときに思ってたんだよね。
鍋があればいいのにって。
街から一番遠いダンジョンまででも、歩いて1時間もあればつく。
誰も森の中で野宿なんてしないから、調理道具なんか持ち歩くはずもない。