21話
「分かってると思うが、今後も、親切にしてやれよ。リオ、お前も、ここで何をいくらで買ったか時々報告してくれ」
「報告?」
めったに防具は買わないと思うけれど。なんで報告?
あ、もしかして、やっぱりサージスさんはレアアイテム、もしくはユニークアイテムコレクターなのかな?また何か見つけたら教えてほしいってこと?見るだけでも楽しいってことなのかな?
……っていうことは、僕の物になってこの兜……本当はほしかったけれど、僕に譲ってくれたってことだよね。
「分かりました。……えーっと、この兜は譲れませんが」
だって、ジャパニーズアイに鍋って出てたんだよ。鍋が欲しかったから、これは譲れない。
店内をぐるぐると見回す。
……そうだ。ちょっと試してみよう。
青いほうの右目をつむるとすぐに【スキルジャパニーズアイ発動】と声が頭の中に響く。
その状態でもう一度店内をぐるぐる見回すと、腕輪が無造作に放り込んである陶器の器に文字が浮かんだ。【土鍋】
鍋?
また、鍋なの?いや、でも防具屋で鍋?
「えーっと、これ、もしかしてドロップ品ですか?」
土鍋と表示された陶器の大きな器を指さす。
「ああ、それもドロップ品ですが、防御力1しかないし、持ってみれば分かるが重たくてむしろ戦闘の邪魔になるから……。って、いやいや、まさか……これも、レアドロップ品と言うのでは……」
店主らしき上下スーツにかっちり身を包んだちょび髭の男が飛んできた。
「鑑定スキル発動【詳細鑑定】……防御力1あげる効果。……名前はド。星は無く無印……」
店主さんは鑑定スキル持ちなんだ。すごいなぁ。詳細鑑定って、名前と効果以外の何がわかるんだろう。
「星?」
「ああ、リオは知らないのか?鑑定スキルにもいろいろあって、星で表示されるのはドロップ頻度だな。無印ならば、容易にドロップする。星が5つついていれば、レアと呼ばれるもので、なかなかドロップしない。まれに星が6や7あるものもあるが、数えるほどしか出ない物だ。ユニークアイテムと呼ばれるものは星が8だったか?」
「10です」
店主がサージスさんに端的に答える。
「私のスキルは、どんな防具でもドロップ品ならばレア度まで鑑定できるんですよ。今君が頭にかぶっている兜も無印。残念ですが、レアアイテムやユニークアイテムである可能性はありませんよ。もちろんこれもね。ドロップ品大辞典を全部覚えるなんて無理でしょう。見覚えがない程度の知識で知ったかぶって話をしただけでは?」
ふふんと、勝ち誇ったような顔で店主が私を見下ろした。
「え?……あれ?そう、なの、かな?覚えたつもりだっただけなのかな……?」
サージスさんが、土鍋の中に入っていた腕輪を取り出し、土鍋を持ち上げ頭にかぶった。