番外編*シェリーヌ様の研究
書籍発売記念番外編
それにしても……。
レアドロップ品……の、これは一体何なのかしら?
サージスに売りつけられた防具。
うちで働く鑑定持ちに鑑定させたけれど、星無の名前付き。
「ド」
ドなんて変な名前だ。(注*ジャパニーズアイで見ると土鍋です。無事にシェリーヌ様の手に渡ったようです)
防具……兜ではないかと思われるのは確かだ。だが、防御力は低い上に、重たい。そして、どう見ても……。
焼き物に見える。
レンガよりは多少しっかりしたものではあるけれど……。手元から落としただけで割れそうだ。
手荒な扱いはできない。
……こんな、もろそうな防具、しかも頭に装着すると、首への負担も大きな物。一体どう言うことだろうか。
……レアドロップ品としても、全く利用価値がなさそうな品……。
「あー、まぁいいわ。とりあえずもう少し色々壊さないように実験してみましょうか」
ドロップ品によっては、他のアイテムと組み合わせると非常に効果が高くなるものがある。
例えば、この攻撃力が上がる靴……実験して分かったことがある。
真っ赤で、細いヒールの靴だ。つややかでとても戦闘に向くとは思えないのだが、攻撃力が30も上がる。
入手時は、詳細がさっぱり分からないため、色々研究員と実験を重ねたところ「足を踏む」攻撃力が有効的だと判明した。
(注*ジャパニーズアイで言うピンヒールである)
なるほど、かかとがまるで針とまでは言わないけれど、とても細いのは攻撃するためだったのだと、所員一同納得はしたのだが……。
「足を踏むというのは、近距離攻撃ですよね?とすると、短剣持ち?」
「いや、もしかすると遠距離攻撃をする者が、敵に接近を許してしまった時の攻撃手段として使うことも」
「試してみましょう」
鑑定持ちの中には、鑑定では分からないことまで知りたくて仕方がない者も何人もいる。
また、ドロップ品研究所として、様々なレアドロップ品が集まることから、実際に使って試してみたいという元冒険者も集まってきている。
「俺にまかせな!早速使ってみよう!」
筋肉で力押ししそうな体格のゴリラ系元A級冒険者のゴーリオは、見た目とは裏腹にどんな武器も器用に使いこなす。
引退理由は利き腕である左腕を損傷し、思うように動かせなくなったから。……思うように動かせないとはいえ、日常生活には全く支障がない。
ゴーリオが真っ赤な靴を履く。
……うん。ゴーリオの巨体をもしっかり支えることができるんだね。極細のヒールなのに。流石レアドロップ品。
「【鑑定】あ、だめです攻撃力が上がるどころか、呪いがかかりました。HPが毎秒1つずつ減っています」
鑑定をしていた男の言葉。
「ちょ、マジか!」
慌ててゴーリオが靴を脱ぎ捨てる。
「え?呪い?それは本当なの?もう一度試してみましょうか」
と言うと、ゴーリオが青い顔をして首を横に振った。
嫌いだものねぇ。呪いの類。見た目は怖い者知らずなのに、怖がりなんだから。
ふぅと小さくため息を吐き出し、ゴーリオの脱ぎ捨てた靴を手に取った。
ドロップ品はサイズがある品もあるけれど、体に合わせてサイズが変わる品もある。
ゴーリオにとても履けなさそうなサイズなのに、しっかりハマったということはサイズが変わる靴なのだろう。
ブーツを脱ぎ捨て、真っ赤なヒールの靴に足を入れる。
「シェリーヌ様、呪われますっだめですっ!」
ゴーリオが悲鳴を上げる。肝っ玉の小さな男だ。
「【鑑定】……あれ?祝福……毎分ごとにHPが1回復するようです」
へ?
「さっきは呪いだと言っていたわよね?今は祝福?」
色々と研究を重ねた結果。男性が吐くと呪い。女性が吐くと祝福という特殊効果が付くと判明。
さらに、短剣も剣も弓も槍も何の効果も無かったのに、鞭を使うときには鞭での攻撃すると魅了が付与されることがあることが分かった。
……と、いうように。
赤い靴は女性と鞭組み合わせると良いことが分かった。
レアドロップ品には相乗効果を高めるアイテムが存在するのは他にもいろいろある。
ゆえに……。
「さぁ、みんな!このドっていう名前付きの兜の詳細を研究するわよ!」
「「「はい!」」」
サージスに売りつけら……サージスが持ってきてくれたこの防具にもきっと何か秘密があるはずだ。
ご覧いただきありがとうございます。
無事に書籍が発売になりました!お手に取っていただけると嬉しいです!
購入予定の無い方も色々な形で応援していただけると助かります。
「ハズレドロップ品に味噌、面白いよ」とSNSなどで一言言っていただいたり
ブクマ感想評価などしていただけたり
お近くの図書館にリクエストを出していただいたり……etc
書籍版の本文挿絵のリオがめっちゃ可愛くて、挿絵チェックをさせていただいた時に
「このシーンをこんなに素敵に可愛く描いてくださったともぞ先生最高っス!」
「うきゃー!最高っす!最高っス!このシーンの挿絵指定してくださった担当様も最高っす」
さらには
「こういうシーンを書いた私、偉い!ぐふふー!(自画自賛)」しました。
本当、なんか、見たら分かるけど、にやってなります。
あと番外編……も、書き下ろしてます。
機会がありましたら小学館ガガガブックス様より発売中です!電子書籍も同時発売です!