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「目先のお金に目がくらんで、商売の本質、大切なことを忘れてしまってはいけませんからね。私たちは冒険者の方々があって商売が成り立っております。仕入れたものを高く売って金儲けのみに走れば、いずれ誰も店に品物を持ち込んではくれなくなるでしょう」
なんか、すごい。
ロマンスグレーというのだろうか。白髪が少し混じった灰色の髪をした初老に差し掛かった店員さん。
「ご挨拶が遅れました。いらっしゃいませ。リオ様、シャル様。この店の店長をしております、セーバスと申します。今日はどのような品をお探しで?」
て、店長さんだ。っていうか、なんで私の名前知ってるの?シャルは有名だから分かるけど。もうシャルの新しいパーティーメンバーとして噂が広がってる?あ、それとも……黒目が目印になっていて。
「セーバスさん、今日はリオの防具を買いに来たんだ。見てよこの兜。もうちょっとましなの見繕ってよ」
「拝見しても?」
シャルの言葉に、セーバスさんが雪平鍋を手にとった。
「【鑑定】」
ああ、鑑定魔法が使えるんだ。
「おや、名前付きですね。ユキヒラ。見たことがない防具なので、レア物かと思ったのですが、名前までついているとは。同じものが二つとないレア中のレア。ずいぶんとよい品のようですね」
店長さんの言葉に、目が輝く。
「そうなんです、これ、よい品なんですっ。分かってもらえますか?」
「は?いくらレアでも防具として防御力ないのは致命的でしょ」
シャルが嫌そうな顔をした。けど、無視です。
「軽くて負担にならないし、それにこれを買ってからそれまで闇兎の攻撃でしりもちついてたのが、耐えられるようになったんですよ」
闇兎は4階層に出るモンスターだ。……私にしてはずいぶん大きな変化なんだけれど、よく考えたら冒険者としては微妙な主張だ。セーバスさんの困った顔を見て口を閉じる。
「私の鑑定で分かることには限界がありますからね。もう少し詳しい鑑定ができる者に鑑定させてみましょう。それから、リオ様にふさわしい防具に一つ心上りがございます。倉庫に保管してありますので今持ってまいります。その間ご自由にご覧ください」
と、セーバスさんは行ってしまった。
私にふさわしい防具?いらないよ!雪平鍋でいいかr!
だって、さすがに、もっと微妙な主張だから言えなかったけれど、鍋としてめっちゃ便利なんだよっ!
防具にもなる携帯鍋なんて、他にないでしょ!いや、土鍋とかあったね。首が痛くなるくらい重たいやつ。
【ジンギスカン鍋】
ん?
んん?
文字のしたほうに小走りに駆け寄る。
また、ありました。鍋!
雪平鍋と土鍋に続いて3つ目です!
真っ黒で大きくて重たい分厚い金属製の兜がそこにはありました。
「うわー、リオって、本当にこういう変なのばっかり見つけるね」
えーっと、説明説明。【ジャパニーズアイ:2重】【ジャパニーズアイ:3重】
(´・ω・`)あのさー、わたしさぁー、
ずぅーーーーーっと、ジンギスカン鍋って、元々は、兵隊さんが兜を鍋代わりにってやつ、信じてたんだよね。
それ、違った。
ジンギスカンって日本でできた料理で、日本人があの鍋作ったそうな……。
(:_;)びっくりしたよね