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「いいよ、僕はこれが気に入ってるんだから。他の兜なんて」
っていう言葉を言う時間さえ与えられなかった。もう、シャル。無駄に飛んで、また必要な時にスキル使えなかったらどうするのっ。
防具屋じゃない。スキル補助用の魔法具屋に行って、シャルに魔法具を買わなくちゃ!
ん?
あれ?もしかして、シャルも今、そんな気持ちで私を防具屋に連れてきた?
随分というか、見た限り一番立派な防具屋だ。
「いらっしゃいませ。本日は何をお探しでしょう」
店の中には店員らしき制服を着た男性が4名ほどいて、それぞれがお客さんに声をかけていた。声をかけてくれたのは、一番年配の制服とは違うジャケットを着た男性だ。偉い人なのかな?
「またああいうモンスターが出ても身を守れるものを出してくれ!金ならある!」
「触ったら燃えただろ、燃えない防具があるんじゃないのか?」
他のお客さんの声が耳に入ってくる。
「あー、なるほどね。冒険者に見えない人間がやけに多いと思ったら、そういうことか」
シャルが呆れたようにため息をついた。
「金に物を言わせて武器や防具を買いあさられると厄介だね。前線で戦う冒険者たちに必要なものが回らないのは……」
シャルが迷惑そうな目を冒険者には見えない身なりの客たちに向ける。
そうか。誰でも身を守るための防具を買って身を守れるなら欲しいよね。
だけど、家の中で縮こまって震えている人がよい防具を身に着けるよりも……。
般蛇を必死に押さえつけ、傷だらけになっていたサージスさんやガルモさんが思い浮かんだ。
必死に戦う人たちにこそ、より良い防具を使ってほしい。
ギルドの与えられた支払い用のカード。
責任重大だ。良い物を集めなくちゃ。厄災への備えとして。
「ええ、そうなんですよ。困ったものです。我々としても商売ですから、むげに断るに断りにくくもあり……」
店員さんが苦笑いをする。
すでに私の視線は、店内に並んだ武具へと向いている。
ああ、ここには本当に良い物が多い。
腕にはめる防具、あれはいい。盾代わりに、腕で剣の攻撃を受けられる。あれであればフェンリルの鋭い歯すら受け止められると、ドロップ品辞典には書いてあった。レアドロップ品だ。サージスさんに浸かってもらいたい。
あっちの防具は、ブーツだ。足元への攻撃を防げるだけでなく、大地を踏みしめる力をアップする。押されても足の踏ん張りがきき、後ろに下がらされない。ガルモさんが使えば効果が大きそうだ。あれも、レアドロップ品。
他の人にとられないうちに、早く回収しちゃいたいと、そわそわし始める。
「とはいえ、冒険者であれば武器も防具もどんなに良い物をそろえても完ぺきではないということは承知の上でお買い上げいただいております。ああいう輩は高い金を払ったのにすぐに壊れたなど、言いがかりに近いことをおっしゃられる方もいますので……私共としてはギルドに登録している方のみと取引をさせていただいております」
店員さんの言葉に、視線を戻す。
ご覧いただきありがとうございます。
すでに、街の人たちの一部も、餓鬼の脅威が過ぎ去り買い占め行動に出ております……。
あー。