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「ああ、刺す武器なのか。その大きさだと近距離攻撃しかできないが……モンスター相手じゃなくて、人間相手なら……つかまっても隠し持っていたそれで刺して逃げるとかできそうだね。ふぅーん、リオもちょっと考えてるってことか」
へ?人間相手?つかまる?刺して逃げる?
何のことだろう。
芋を見つけた時に掘るんだよ?
そのあとに回った武器屋では、火属性他、魔法属性がついている武器を買い込んだ。
「レア品を扱う店って、少ないんだ……」
あれからは、知っている品ばかりだった。レアドロップ品と呼ばれるものもいくつか置いてある店もあったけれど、シェリーヌ様の「ドロップ品辞典」に載っているものだったし。
「何?レア品が無くてがっかりした?」
頭に乗せた雪平鍋をそっと触る。
「初めて入った店で、レア品を見つけたし……普通にお店にはいくつかあるものかと思っていたんだ」
「レア品なんてさ、価値が分からないもの怖くて普通の店はおけないだろ。鑑定スキル持ちがいて、性能が分かったとしても需要があるかまで分からない。商売の勘が働く店主ばかりじゃないからね。だったら、売れ筋の品を仕入れたほうが確実だよ。売れるかどうか分からない物を仕入れて置くのは、経営に余裕のある大商店か、半分趣味でやってる店くらいだろ」
言われてみればそうか。売れないものを仕入れて置いていたって、赤字になっちゃうもんね。おばあさんの店は、消毒液の売り上げで回っていたみたいだし。ああそうだ。あれからジャパニーズアイに反応する品物も見つからなかったし。
おばあさんの店が、特別だったんだと改めて思った。というか、あれだけの数の忍具と呼ばれるものを集めるの、大変だっただろうなぁと改めて思った。
それから、私が初めて入った店。この雪平鍋を買った店、大きな店だと思っていたけれど、経営に余裕のある大商店だったんだね。
親切な店員さん、元気かなぁ。あ、そうだ。あの店はよくわからないレアドロップ品も仕入れて扱うのであれば「忍者の道具」を見せて、こういう道具あったら教えてって頼んでみようかな。
って、だめだ。教えてって頼むの、買うから仕入れてと勘違いされたら困るよ。おばあさんの旦那さんは買い集めてたけれど、私には買えないもん。
シャルが、私の頭から雪平鍋を取り上げる。
「これだって、リオ以外の誰が買うっていうの?」
雪平鍋を、シャルが眉根を寄せて見た。
「頭が小さい人間にしかかぶれないうえに、だっさい見た目。その上防御力が1?2?なんか糞みたいな性能しかない兜なんて」
兜っていうか、鍋だもん。
鍋として優秀だもん。防御力だって、1とか2じゃないもん。3あるもん。
親切な店員さんが選んでくれたのに、なんで悪く言うのっ。
「そうだ、もっといい兜買おう!」
シャルが私の手をとって武器屋ではなく防具屋に入って行った。歩いてじゃないよ、飛んで。
このあたりには餓鬼の姿はもうなくなっていて、徐々に店が開き始めているから、1つ目の武器屋に行ったときのようにドアを叩いて事情を説明する必要もないんだよ。
商売人だからね、危険がないと分かればさっさと仕事始めるさ。
親切な店員さんの名前を忘れたので、親切な店員さんと言っている。……えーっと、なんて名前だったかなぁ……憶えている人、いるのかなぁ?