20話
「あ、あの、もしかしたら、お店の人からしたら当然の接客だったかもしれませんが、僕にはすごく親切だって感じました」
なんせ防具屋に入るのが初めてだからなぁ。普通だったのかなぁ?
「だから、リオ、どうしてそう思うんだ?」
サージスさんがチロリと店員さんを疑わしそうな目で見ている。
「だって、僕は防具屋に入るのが初めてで、右も左も分からない状態だったのを、どういう仕事に使うのか聞いて相談にのてくれて、僕にあったサイズで軽くていい品を選んでくれたし」
回りで話を聞いていた冒険者が口をぱくぱくして何かを言いたそうにしている。
「は?いい品?いや、リオ、防御力が3しかあがらないんだぞ?」
「はい。あの、でも、ドロップ品だというのに、僕は知らなかった品だから……」
「知らないから、防御力が3しかあがらないって分からなかったから騙されそうになってたんだぞ?」
首をぶんぶんと横に振る。
「違いますよ、だって、僕は一通りドロップ品大辞典の品は覚えてるので」
「え?5万点以上も掲載されているドロップ大辞典を覚えている?」
店員さんが大声で叫んだ。
「ええ……そうです。残念ながら、10年ほど前の大辞典で、それ以降に発見されたレアドロップ品やユニークアイテムのことを僕は知らないんですけれど……その、10年前のドロップ品大辞典には載っていないってことは、きっとレアドロップ品か、ユニークアイテムなんですよね?」
にこりと笑う。
「ま、まさか……」
「収集家に売れば金貨10枚はするような品を、僕にサイズが合うからと出してくれて……しかも、銀貨4枚でも安いのに、僕が値引き交渉が下手くそだろうからと親切に、はじめから値引いて銀貨1枚だと言ってくれるなんて」
ぱくぱくと、冒険者たちが今度は言葉を失ったかのように口を動かしている。
「くっ。くくくっ。はははははっ」
サージスさんが爆笑し始めた。
「そりゃぁ、親切だ、間違いないなぁ。はははははっ」
店員さんが真っ青な顔をして僕の頭の上の兜を見ている。
「レアドロップ?防御力が3しかない上に……、見た目もかっこ悪い……それ……が……」
今にも泡を吹きそうに見えるのは気のせいですよね。
「俺が証人だ。言質は取った。銀貨1枚だと確かに言っていたな。ほら、リオ、さっさと金払え」
「あ、はい。本当にこんないいものを売ってくれてありがとうございます!」
袋から銀貨1枚を取り出して店員さんに渡そうとしたんだけれど、店員さんは魂が抜けたようになっている。
サージスさんが、僕の手から銀貨を取り、店員さんの手に握らせた。