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2話

 ろくなスキルもない上に、非力な女。こんな役立たずな荷運者を雇ってくれるんだから、感謝しなくちゃ。なのに、私はもう荷物が持てないと弱音を吐いた。

 私が悪い。

 もう少し前に、あと3つくらいしか持てませんと言っておけば、モンスターをこれ以上倒してドロップさせずに帰ることができたかもしれないのだから。

 アリシアさんがイライラするのも、フィーゴさんがこうして私の立場を思い出させてくれるのも当たり前の話だ。

「あー、もう二人とも!また、無駄な時間を使ってる。クロ、荷物がこれ以上持てないって?」

 後ろでアリシアさんとフューゴさんとのやり取りを一通り聞き終わったマイルズ君が口を開いた。

 マイルズ君は回復魔法が使える。

 ロードグリは、アリシアさんフューゴさんマイルズ君の3人の冒険者パーティーだ。そこに私が荷運者として雇われている。

 フューゴさんが私の髪を離してマイルズくんを見る。一番小柄で若い少年だけれど、フューゴさんもアリシアさんもマイルズくんを参謀役として頼っている。

「で、ここまでのドロップ品で価値があるのはどれ?」

 マイルズくんの言葉に、背中に背負った鞄から、3つの品を取り出す。

「ハイポーションと、腕輪……石の色と模様からたぶん防御力を10ほど上げると思う、それから靴。効果は分からないけれど、ドロップした時に紫色に輝いたから価値があると思う」

 取り出した3つだけで、金貨5枚は最低でもすると思う。

「そう。じゃぁ、これ、僕が持ってあげる。これで、荷物が減ったでしょ?」

 マイルズくんが笑った。靴はかさばっていて重たかった。それが減ったぶん、大きさや重さにもよるけれど確かにいくつかは持てるようになった。

「ほら、さっさと拾って来いよ!お前の収入は”運んだ品”を売った金額の10分の1だってこと忘れてないよね?いっぱい拾って運ばないと稼ぎにならないよ?」

 マイルズくんの言う通りだ。いつもこうして私の失敗をフォローしてくれる。

「そうそう、一人じゃモンスター倒しせないんだから、私たちに感謝しなさいよ!スキル発動【火炎魔法E】命中!ほら、あっちにもドロップしたわよ」

 あの3つを除くと、ドロップ品の売値は銀貨50枚くらいだろうか。運べば取り分は十分の1の銀貨5枚。……パンなら30個ほど買えるお金だ。安い宿に1泊できる。

 クズスキルしかない私には、十分すぎる収入が得られる。今日は、ドロップした品がよかった。いつもは銀貨1枚ほどだから。

 本当に、アリシアさんのいうようにロードグリに荷運者として雇ってもらえて感謝しなくちゃいけない。

 だけど、なんでロードグリは、C級パーティーなのに、クズスキルしかない上に運べる荷物の量も少ない私みたいな荷運者を雇ってくれたんだろう?

 パーティーは上からS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級とある。

 C級パーティーともなればもと優秀な荷運者を雇えると思うのに。私に同情してくれたのかな。

 急いでドロップした品の場所まで走っていく。3人のいる場所から、10mほど離れた場所だ。

 慌てすぎて足がもつれて転んでしまった。

「あはは、転んでるぜ、スキルがクズなだけじゃねぇな、クロはクズ中のクズだ」

 フューゴさんの笑い声が聞こえる。

「ちょっと、何、荷物つぶちまけてるのよ!きっちり拾いなさいよ!」

 アリシアさんに怒鳴られてはっとする。

 背中に背負っていた鞄の口が開いていたのか、転んだ拍子に中身が飛び出してしまった。

「はい、ご、ごめんなさいっ」

 フューゴさんの言う通りだ。私はスキルを除いてもクズ……ううん、愚図な人間だ。早く散らばったものを拾い集めようとするんだけれど、転んだ拍子に右手を痛めたみたいで、うまくつかめない。

「あーあ。ぐずぐずしているから、モンスターが寄ってきてますよ」

 え?

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