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「何、旦那さんって、これ読めたの?何が書いてあるの?」
シャルがおばあさんから本を受け取りパラパラとめくる。
それ……。
【忍具の秘密】
本の表紙に書かれた、図形のような文字。
形は、前にダンジョンの100層の秘密の部屋に置かれていた本の文字に似ている。
けれど、あの部屋の本は部屋から持ち出すと消えてしまって、持ち出せないはずなのに……。
「読めやしないよ。だけど、異国の武器の本じゃないかって、そこに描かれてるものにはまってのぉ。ワシが売った酒……いや、消毒の売り上げで買い集めとったんじゃ。ほれ、それも、ここに描いてあるじゃろ?」
おばあさんがシャルの手元の本を数ページめくって、鎖鎌の絵を指さした。
「ああ、本当だ」
私も、覗き込む。
絵が描かれていて、その下に数行の図形のような複雑な文字。
【鎖の柄の先に鎖を付け、鎖の先端に分銅を結び付けた武器。分銅を投げつけ相手の武器に巻き付けるなどして使えなくし、近づき鎌で切りつける。また相手を倒した後に捕縛用に使うこともある】
武器だ。
確かに、武器だ。
「あの、武器だって、本当に旦那さんはこの本に書いてあることは読めなかったんですか?」
「ああ。読みたいと同じ文字をかきだして法則を見つけようと研究したり、読める人はいないかと探したり、鑑定スキル持ちにお願いしたりと手を尽くしたけれど、とうとう読めないまま死んじまったよ」
そうなんだ。
「でも、武器です。あの、シャル、ちょっと手伝って」
「え?何を?」
シャルとおばあさんの背中を押して、外に出る。狭い店内で鎖鎌を振り回すわけにはいかない。
シャルに忍刀を持って、体から離して構えてもらう。
「あの、もし危険だと思ったら飛んでください。上手くいくか分からないので」
と、シャルにお願いして、シャルの正面に鎖鎌を持って立つ。
えーっと、左手にとりあえず鎌を持って、右手で、分銅を投げる。
ぼてん。
シャルと私との間に分銅部分が落ちた。
「……」
私の力じゃ、遠くまで飛ばせない……。
シャルが呆れた顔をしてみている。
おばあさんがちょっと笑った。
「旦那は、振り回して相手に当てるんじゃないかっていってたよ」
振り回す?
分銅を拾い、分銅から50センチほどの場所の鎖を持ち、自分や周りの人にぶつからないように、ぐるぐると回してみる。
うわー、振り回されそう。
私が非力だからかな。
「ああ、なるほど。なんかそれにあたると痛そうだ。確かに武器に見えなくもない」
シャルがぐるぐる回っている分銅を見た。
「あっ、ごめんっ」
握力が足りず、ぶんぶん調子にのって振り回しているうちに手からすぽんとぬけてシャルの方へ飛んで行ってしまった。
やばい、やばい。ぐっと鎌まで飛んでいかないように力をいれて握りなおす。
飛んで行った分銅をよけようとシャルが忍刀を飛んでくる分銅の方へと伸ばすと、ぐるんぐるんと勢いのついた鎖が忍刀に巻き付く。
「なるほど」
シャルが鎖が巻き付いた忍者刀を見た。
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