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「もし酒飲みがおるんじゃったら、水でもお湯でも果実水でも何でもええが、半分以上は入れて薄めてのむんじゃよ?エールと同じぐらい酔える酒にするには、10倍じゃ。こいつ1に水を9」
「なんだ、この瓶1つで酒樽1つ分も飲めるの?だったら安上がりだし、収納袋なんてない人間からしたら持ち運びも便利だね。ずいぶん売れるでしょ」
「金のない酒飲みにはな。味はいまいちだから、稼げるようになったら来なくなるさ」
ぼそぼそと二人は会話を続けている。何を言っているのか気になりはしたけれど、それよりも、実はもっと気になっているものがある。
【手裏剣:最も有名な忍具。投げるのではなく打つのだ】
【鉄拳:忍具の一つ。素手よりも大ダメージを与える】
【角手:忍具の一つ。指にはめて使う隠し武器】
【万力鎖:忍具の一つ。振り回してつかう】
【猫手:忍具にゃ。顔をひっかくにゃ】
【寸鉄:忍具の一つ。指にはめて隠し持つ】
【手甲鉤:忍具の一つ。武器としても防具としても使える】
【撒き菱:忍具の一つ。天然のヒシの実が使われることもある】
【苦無:忍具の一つ。穴を掘ったり武器にしたり便利な道具】
【忍刀:刀より短く剃り返しがなく鍔が大きい】
店のあちらこちらに、ジャパニーズアイの文字が浮かんでいるのだ。
「こんなにたくさん……」
忍具と書かれたものが多い。
そして、忍刀は、忍具の忍の字と、前にドロップした細い剣に現れた文字、刀と同じ文字だ。確かに同じように細い。
「すごい……」
消毒液の入った壺の反対側の壁の棚に所狭しと並べられた武器。
そして、展示台の上に並べられたちょっと変わった形をした剣や、斧などいろいろな武器。
「すごいだろう、見たことのない物ばかり。旦那は売る気もなくてねぇ、集めるのが好きだったんだよ」
シャルが私の横にたって、台の上に載っている武器を一つ持ち上げた。
【鎖鎌:忍具の一つ。大草流で使われた】
「これなんて、農具でしょう?」
シャルの言う通りだ。忍具とは出ているけれど、作物を刈り取るときに使う鎌だ。どう見ても、武器じゃなくて農具。
まぁ、刃物の一種には違いないから、切りつけることはできるだろう。
でも、なぜその鎌に鎖がついているのか。重たくて使いにくいと思うんだけどなぁ。
……もしかして、体を鍛えながら農作業をするためのもの?
「いや、旦那が言うには武器だそうじゃ。といっても、旦那も半信半疑じゃったがの」
おばあさんが急にしゃがみこみ、台の下に置かれた木箱を引っ張り出した。
「どこにやったかのぉ」
箱の中の物にも文字が見える。
【鳥の子紙:火薬がないため鳥の子は作れない】
【縄梯子:忍具の一つ。登器】
【鍵縄:忍具の一つ。登器】
「あった、あった、これじゃこれじゃ」
おばあさんが箱から取り出したものの表面に積もったほこりを、口でふぅっと吹いて吹き飛ばした。
「これに描いてあるもんを見つけて集めとった」
おばあさんが取り出したのは、1冊の本だ。
猫手……なんつー武器を忍者は考えたのだ……。