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よし!私用の武器もなんか見てみよう。
ぎゅっぎゅっと涙を袖口でこする。
【スキルジャパニーズアイ発動:2重】【スキルジャパニーズアイ発動:3重】
シャルのあとを追いかけて、店を出た。
【***】
早速ジャパニーズアイに何か反応した。隣の武器屋に文字が浮かんでいる。
「シャル、次はここでいい?」
店の前で収納箱を抱えて立っているシャルに声をかけてから店の中に入る。
先ほどの店とはちがい、どうにも薄暗い雰囲気の店だ。並んでいる武器にはほこりがかぶっている。
「おや、珍しい、随分若いお客だね。ここは、死んだ主人が趣味で集めたよくわからないガラクタばかりだからね。お勧めはそれだよ、皆それを買いに来るんじゃ」
うわぁっ!
びっくりした。
店の奥の暗がりに、小さなおばあさんが座っていた。全然気が付かなくて、突然声をかけられたものだから、背中がひゅってなった。
「これ、何?」
皆が買いに来るというのは、壁際の棚にぎっしりと置かれた陶器の壺だ。
「蓋を開けてみれば分かる。あけてみぃ」
ひししとおばあさんが笑った。
シャルが一抱えもあるような王来な壺に、しっかりと閉めてあったコルクの栓をぎゅっぎゅと力を入れて回しながら開けた。
「う、わぁ!」
ふたを空けたとたんに、シャルが顔を反らす。
「え?何?」
何が入っていたのか気になって壺を覗き込んだとたん、むわぁーっとお酒の匂いに包まれる。
すごい、匂い。匂いだけでも酔ってしまいそうなほど強烈なお酒の匂いに、シャルが慌てて栓を戻した。
「酒?なんで、ここ武器屋でしょ?営業許可も武器屋で取ってあるんでしょ?酒を売るには別の営業許可が必要だったはず」
へー。そうなんだ。シャルは詳しいね。
「いや、それは酒じゃないよ、坊主」
おばあさんが首を横に振った。
「はぁ?僕が酒も知らないまだミルクしか飲めない子供だと馬鹿にしてる?酒の匂いくらい分かるよ」
【ラム酒:フランベに用いることができる。焼き料理の最後にフライパンに落とし燃やして香りをつける】
フランベ?
焼き料理って出てくるってことは、料理に使うものなんだ。
料理か……。でもラム酒って、酒っていうくらいだから、酒なんじゃないのかなぁ?おばあさんの方が変なこと言ってる?
「消毒に使うためのものさ。傷を負った時なんかにな、傷口をもこいつで洗ってやるんじゃ」
消毒?
【ラム酒:アルコール濃度が77%と高く消毒に適している】
あれ?表示が代わった。情報が上書きされた?
料理に使うものじゃないの?
【ラム酒:フランベにも消毒にも使える】
あ、さらに上書きされた。知っていることも情報にプラスされていくってこと?
でも、マニ車は、メイスかなと思っても、メイスとも上書きされなかったし、装飾品じゃないかとシャルが言っても情報は増えなかった。
もしかして、間違った情報はジャパニーズアイで表示されない?
よくわからないけれど、そうだとすると、マニ車はメイスみたいな形してても、メイスじゃないってことになる。
フランベ……家庭料理じゃしないよね。万が一火事になったらだめだし。
いや、する人はするのかな?とはいえ、これ、火災保険とかどうなるんだろう?