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時々ありましたね。俺の勘だと、こっちの道に進むと宝箱があると思うみたいな。確かにあまり当たったところを見たことはありません。それよりも、ダンジョンの地図を頭に入れて、宝箱がよく出る場所をチェックして進んだ方がいいと思うんです。
「だが、私の勘では、君が気になっていることには意味があると思うよ」
意味がある?
ジャパニーズアイで般若という文字が気になるというそれに、意味が……?
「ふっ、どうせ、支払いはコレだから、リオは気にせず気になるものどんどん言えばいいよ」
「そうですそうですぞ、あの時に買っておけばよかったという後悔は、厄災時には命にかかわるでしょうし」
シャルが支払い用のカードをつついた。
あの時買っておけばという後悔。
ごくりと唾を飲み込む。
そうだ。
もし、それで……シャルやサージスさんを助けられなかったら、後悔どころではない。絶対に嫌だ。
「はい、分かりました」
「大容量の収納箱もレンタルできたし。ここに買ったものを入れておく、厄災後、使わなくて残ったものは売るか城に渡せばいい。個人的に買った物やダンジョンで手に入れたものなんかは今まで通り鞄に入れれば、ごちゃごちゃになることもないだろ?」
首をかしげる。
「え?ごちゃごちゃにはならないよ?自分で入れたドロップ品はちゃんと覚えてるし。買った物も、忘れないし」
店主がふふと笑った。
「私の店だけではなく、これから王都の他の店も回るのでしょう?それぞれのお店で10個以上買っていけば、どれくらいの数になるのか。王都はお店が多いですよ?」
お店が多い。うん、確かに王都は広いもんね。
お城の塔から見下ろした街はすごかったよ。
「大丈夫ですよね?この収納箱はすごくたくさん入るんでしょう?」
「ええ、もちろん。この店の品物全部の何倍も入りますよ。私が心配しているのは」
店主が言葉を続けようとして、シャルがあーっと声を出した。
「そうだった。そうだった。リオだ。リオはダンジョンでドロップしたものをハイスピードで回収しても、ちゃんと何を回収したのか把握してたよな」
「ええ、そりゃもちろん。もし、収納袋の中がいっぱいになって入らなくなった時に、あまり価値のないものからあきらめて捨てていかなければなりませんし」
シャルが店主の肩をぽんっと叩いた。
「たぶん、リオはこの店の何個分ものアイテムを収納しても覚えてる……」
「え?まさか……大量に買った品と大量に拾ったドロップ品を、メモも取らずに仕分けができるんですか?」
店主が信じられないという顔をした。
あれ?なんか、おかしいの?私、ちょっと変?
あ!そうか!
「確かに!買ったアイテムと同じアイテムがドロップしても、どちらが買ったもので、どちらが拾ったものかを見分けるのは無理かもしれないです。ドロップした時期……なるべく新しい物が欲しいというお客様もいるってことですよね?そう考えたら、ちゃんと収納袋と収納箱に分けておいた方が確かにいいです。すいません、僕……まだまだ考えが甘かったです。勉強になります!」
ぺこりと丁寧に頭を下げる。