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「厄災が終わってから使わなかった物は売ればいいんだから、別に無駄遣いじゃないよ。備えあれば憂いなし」
そうか。
「シャルの言う通り、使わなくても後で売ればお金は戻ってくるね……とはいえ、本当にいいの?攻撃力2しかないのに、金貨3枚……」
シャルがにぃっと笑う。
「リオが欲しいんだろ?何か気になるんだろ?」
うんと頷く。ジャパニーズアイで表示される文字が気になる。
「だったら、買っておけばいい。サージスさんってさ」
サージスさん?
「時々、誰も気が付かないモンスターに気が付くことあるんだよね。なんで気が付いたかって聞かれても、いつもなんとなくとか、勘とか言うんだ」
「すごいね」
シャルが私の鼻をぎゅっとつまんだ。
「そう、すごいの。研ぎ澄まされた冒険者の勘、誰にも真似できないそういうの。敵索スキル持ちすら凌駕しちゃうんだよ、なんとなくで」
「ほんにょうに、さーじふさん、ふごいね」
鼻をつままれたままで、変な声になった。
「あー、もう、誰もサージスさん褒めてないっ!そうじゃなくて!」
え?
シャル、今サージスさん褒めてたよね?
あれ?
「リオの、何か気になるが、もしかしたら大事な感覚かもしれないってこと!」
「え?」
「どんな分野でもそうだろうけれど、最後の最後に生死を分けるのは、その言葉では説明できないような、なんとなくとか、勘とかそういうものだったりするの」
シャルがパッと私の鼻から手を放した。
「厄災が終わって、役に立たなくて売ることになったら、僕が買うからいいよ」
「え?シャルも欲しいの?もしかして、飾るの?」
シャルの家ってどんなところなのかな。
マーキングしてあるという綺麗な女性がいた王都のお屋敷は、とても豪華だった。
真っ白な石で作られた暖炉に、壁にはとても美しい花が描かれた絵画が飾られていた。絨毯がふかふかしてたし、
うん、あんな家みたいなら、飾っても似合いそうだ。
「飾らない。プレゼントする」
シャルがニッと笑った。
プレゼント?
……あの、女性にかな?
それとも他に豪邸にすむ知り合いがいるのかな?
「とにかく、リオは、よくわからないけど妙に気になるとか、勘とかそういう感覚も切り捨てずに従ったらいいよ」
シャルの言葉に、話を聞いていた店主が頷いた。
「そうですね。私も、商売の勘というやつに何度か助けられていますよ。この収納箱を手に入れた時には、全財産を叩き、借金までしました。周りの人はそこまでして手に入れようとするなど、何かにとりつかれたんじゃないかと心配していましたが。あの時は、手に入れるべきだと勘が働いたんです。それで、第三領域との取引もできるようになり、結果的に今につながっています」
「すごいです!」
店主さん、親の仕事を引き継いだとかスキルを活かしてとかで、順風満帆にお店を運営しているだけじゃないんですね。
そうか。全財産を叩き借金までして……人生をかけて、成功したんだ。
店主さんがふっと笑った。
「まぁ、勘に頼るなんて、本当は勧められたもんじゃないんですよ。大概はろくなもんじゃない。今度こそ大当たりしそうな気がするみたいなねやつは大概外れる」
虫の知らせだとか、非科学的な話を信じるか信じないかは人それぞれです。
個人的には、科学で解明できていない、科学で説明できないことを非科学的だと言うのであれば、将来的に解明されるかもしれないので、科学的に「ありえない」ことを証明しっかりできてないのであれば、科学の名において否定することは非科学的ではないだろうか。
まぁ、私は、信じたい時には信じて、信じられないことは信じなければいいんじゃないかなーっていう、ファジーな感じで生きてます。はい。
100%どっちよりって感じじゃない方が楽よの。生き方としては。