190
盗難防止アイテムも、それ、たしかレアアイテムにそういう機能が付いたものがあるって聞いたことがある。
形は様々で、鎖のような物だったり、あるいは小さな匂い袋のような物だったり。
位置情報が分かるのは、検索スキル持ちに探してもらうのかな。確かドロップ品の、双子系アイテムだと、片方を使って検索するともう片方の位置が探しやすいみたいなのもあった気がする。それとも、シャルのマーキングみたいに、検索スキル持ちがあらかじめ収納鞄にマーキングとかしておくのかな?
すごい。まだまだ勉強してもしても知らないことだらけで、今すぐ神殿に行って神父さんにいろいろ教えてもらいたい!ああ、自分で本を読めるようになればいいのに。そうすれば神父さんに聞かなくても……。
あ!
あああ!
本、私にも読める本がたくさん置いてある場所があったよね!
ダンジョンの100階層のあの、秘密の部屋。
あそこに、そうだ、あの部屋なら、ジャパニーズアイを使えば本が読める。たくさんあった本を読み放題。
「緊急事態です。出し惜しみは致しません、お待ちください」
店主の言葉に背中がピッと伸びる。
そうだ。緊急事態だ。
厄災の予兆が次々と現れるんだ。
本を読みたいから100階層に連れて行ってくれなんて言っている場合じゃない。
もし、厄災を乗り切ったら、そのあとに……サージスさんにお願いしてみようかな……。食料持って。10日くらい滞在させてもらおうかな。その間はパーティーの仕事も休ませてもらわないといけないし……。そんな我儘言っても大丈夫かな?
違う。我儘を許してもらえるように、とにかく今は少しでも役に立てるように頑張って、厄災に備えてアイテム収集しないと!
ぎゅっとこぶしを握り締める。
私、変わった。
無能スキルしかないから、どうやったって、我儘が言えるような人間じゃないと思っていたのに。
我儘を言えるように頑張ろうなんて……今まで、思ったことがないことを考えるなんて。
気が付いて胸の奥がほこっと温かくなった。
スキルジャパニーズアイ……片目が黒くなるだけの無能スキルなんて言わないサージスさんのおかげだ。
サージスさんなら、リオはいつも頑張ってるからな、100階層につてていくくらいいいぞ!って言ってくれると思う。
だから、頑張る!厄災なんて、きっと、サージスさんやシャルやガルモさんやシェリーヌさん、すごい人がいっぱいいるんだもん。あっという間に終わらせちゃうよっ!
ふんっと、さらにこぶしをぎゅっと握りしめた。
「お待たせいたしました」
店主が、両手で抱えるくらいの大きさの木箱を持ってきた。
「箱?」
シャルが小さく声を上げる。
「ええ、収納魔法のついた収納袋が数あれど、うちが所有しているのは箱なのです。収納箱といえばいいでしょうか。珍しいため、収納機能があるとは思われないみたいで便利なんですよ」
「すごい、これもレアドロップ品なんですよね?箱型の収納袋があるのは初めて聞きました。あ、で、この鍵がもしかしたら盗難防止アイテムなんですか?」
箱には南京錠が一つ取り付けられていた。
むしろ、厄災に備えて本を読みに行くのだ!と、じれじれするね