187
「こちら側が鍛冶師が打ち出した武器でございます。当店は第三領域のワフ村を中心と取引がありまして」
「へぇ、第三領域って、ドワーフしか住んでない地区だよね?そこの村と取引してるんだ。じゃぁどれもしっかりした物ってことだね」
きょとんと首をかしげる。
「シャル、そうなの?この店の品はすごいってこと?」
「は?知らないの?」
シャルが大きな声を出した。
「え?普通は知ってるの?」
武器を買いに行くこともなかったし、買おうとも思わなかったから全然分からないんだけど、もしかしてこれも冒険者たちには常識的な話なの?
店主がちょっと困った顔をしている。
「あの、もしよろしければ必要な条件を言っていただければ、こちらでいくつかご用意させていただきましょうか?その……」
あ。このお店の人もとても親切な人だ。
シャルが小さくため息を漏らす。
「悪いね、今日探しに来たのは、魔法属性のある武器。だから鍛冶師が打ち出したどんな名剣も必要ないんだ」
シャルが店主に事情を説明する。
「そうでしたか。それでしたら、こちらに並んでいる物がドロップ品になります」
「うわぁー、すごい品ぞろえだね。このあたりが火魔法属性付きだね。こっちは水属性付き。あ、珍しい雷属性付きの剣もある。しかもこれ、魔法増強アイテムを設置できるようになってるね。ってことは増強アイテム次第で威力が変わる。あ、こっちの槍は2属性ついてるものだ。すごい、本物だ。レアアイテムですよね。うわー、このお店、すごいです!すごいお店です!」
やや興奮気味に、店主に顔を向ける。
さっきの第三領域がどうのの話で少しもお店のすごさに気が付かなくてごめんなさいという気持ちがこみ上げる。
本当にすごいお店のようです。
店主が驚いた顔をして、シャルにちらりと視線を向けた。
「なるほど、失礼いたしました。私、出過ぎた真似を……」
店主が謝罪の言葉を口にする。
え?なんで?出過ぎたって何が?っていうか、私、何か間違ったかな?
興奮しすぎて、周りが見えてなくて何かしちゃったかな?
「あの、シャル……えーっと、どれくらい買えばいいのかな?」
備えるためと言っても…てん。
「んー、そうだね、とりあえずこの店でよさそうなの上から10個。あと20個ほどキープしておいてもらって、必要に応じてすぐに売ってもらえるようにするとか」
シャルの言葉にうんと頷く。
「分かった。上から10個ね、だったら、これとこれとこれとこれと……あ、これレアドロップ品ですね、すいません、僕には性能までは分からなくて鑑定書はありますか?」
「あ、はい、あー、え?分からないのはそちらだけ、でしょうか」
店主が目を丸くしている。
「あ、はい。あれだけです」
「流石は聖人様……」
いや、聖人様じゃないし。さすがじゃないし。
「あはは、シェリーヌにスカウトされるくらいだからね」
シャルがニヤリと笑って店主に視線を向ける。
「なんと……それほどとは……」
「あ、思い出した、シャル、僕……クビじゃないよね?シェリーヌ様のところに行けなんて、もう、言わないよね?」
シャルがちょっと不満そうな顔をする。
ドロップしたものじゃないと、価値は分からない……
例えば、ハンノマ印の武器が置いてあっても、分からない。(なんだよ、ハンノマ印って)