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「ちょっ、サージスさん、何、食べてるんですかっ!」
シャルが両手に薪を抱えて現れると、サージスさんを怒鳴りつけた。
「え?うまいぞ?シャルも食え。あっさりがいいなら山鳥だな。歯ごたえを求めるなら大鷲。こってりがいいなら……」
「そうじゃないでしょ、サージスさん、シェリーヌさんにリオ取られちゃいますよっ!なんで止めないんですかっ!」
え?シャルがサージスさんを怒鳴りつけれる原因って私なの?
「いや、あー……リオがシェリーヌんとこ行きたいなら……リオはリオの好きなことを選べばいいんだ」
サージスさんの言葉に、シャルがぐっと奥歯をかみしめた。
私は泣きそうな気持ちになる。好きなことを選べばいい、それは私のためを思っての言葉だって分かってるけれど。
でも、突き放されたような気持にもなって……。
「ぼ、僕はサージスさんとシャルと一緒のパーティーでダンジョンに行きたいですっ!」
「リオちゃん?」
シェリーヌ様ががっかりした表情を見せる。
「あの、シェリーヌ様、僕は集まってくるのを待つんじゃなくて、自分でドロップ品を集めに行きたいんです」
サージスさんが、ふぅっと小さくため息を吐き出した。
「ひひ、わりぃな、シェリーヌ。っていうわけだから、リオは渡せねぇ」
にやっと笑って、私の頭をガシガシとサージスさんが乱暴に撫でまわす。
それから、収納魔法付きのポシェットからサージスさんはモンスターの足みたいなやつを取り出した。【タラバガニの足:美味】
「その代わり、これをやるよ」
「まだ持ってたんですか?」
シャルの呆れた声。
「何これ……モンスターの足なんてもらっても……」
シェリーヌ様が眉を顰める。
「だよな、これ、ずっとモンスターの体の一部だとみんな思ってたよな。でも、これドロップ品だったんだよ。リオが発見した」
「ド、ド、ドロップ品ですって?」
「そう、しかも焼くとうまい」
「や、焼くとうまい?え?まさか、これをサージスは食べたというの?これを?」
シェリーヌ様が驚愕の表情をする。
ですよね。普通、モンスターの足……食べようと思いませんよね。まぁ、モンスターの足にそっくりなドロップ品なんですけど。
サージスさんが殻をはずして焼いてシェリーヌ様に【焼きタラバガニ】を渡す。
ちょっと、サージスさん、普通はモンスターは食べないんですよ?渡されても……って、食べた!シェリーヌ様躊躇せずに食べた!
ええええ!見た目、どう考えてもモンスターだし。ちょっとグロテスクだし。平気なの?
「ふわぁ、何、この甘くてほわりと口に溶けていく身。何も調味料は使っていないのでしょう?おいしい……はぁ、こ、これがドロップ品?」
「そう。モンスターの体だと思われてて誰も拾わなかった。だからドロップ品としてシェリーヌの手元に届くことはなかった。それをリオがドロップ品だと気が付いたんだよ。まぁつまりあれだ」
シェリーヌ様が納得したように頷いた。
どうも。本日より、週3更新だったペースを、1日おきに変更しまーす。えーっと、今日が11日だから、奇数。奇数の日に、更新していきます。31日と1日みたいなときは連続更新!……あ、4月は残念ながら30日までだ……。
てなわけで、今後ともよろしくね。