18話
特に、文字が見えることはない。サージスさんには【西洋風イケメン】の文字が引き続き出ているけれど。後は……。
あ、見つけた。
私の頭上。かぶっている兜に文字が見える。
【雪平鍋】
へ?
雪平ってなんだろう?さっぱりわからないけれど、鍋?
鍋って、料理に使う、あれだよね……。
と、私が白い文字について考えている間に、サージスさんが店員さんと何やらやり取りをしている。
「おい、それの鑑定書を見せてくれ」
「あの、その……」
「ドロップ品なんだろ?だったら、鑑定スキルを持っている者に鑑定させて、鑑定書を作っているはずだろう?」
サージスさんが店員さんに私が頭にのせている兜……ジャパニーズスキルで「雪平鍋」と文字の出ているものについて話をしているようだ。
鑑定書なんてものがあるのか。そこに、雪平鍋って何か情報が書いてあるかな?
「は、はい、今お持ちいたします」
店員さんが慌てて紙を1枚持ってきた。
「ユキヒラ?名前持ちのドロップ品か」
なんだ。私のジャパニーズアイって、少しだけ鑑定できるってこと?
「なんだこりゃ。防御力が3上がる?その辺の鍋を頭にかぶっても防御力5は上がるだろ?完全なハズレドロップ品じゃないか。で、それがいくらだ?」
防御力が3上がるんだ。
私のジャパニーズアイはやっぱり鑑定スキルには全く使えないね。性能なんて全然わかんないし、謎の言葉ばかり出てくるんだもん。
……雪平鍋……鍋って出てるんだよ?そりゃ、鍋にも使えそうだなと……。
あ!もし、鍋に使えるなら、夢が叶う!
ちょっと待って、サージスさんが値段を聞いてるってことは、買う気があるってこと?
S級冒険者のサージスさんならきっと、ユニークアイテムとかレアドロップ品だとか知ってるよね。もしかして、コレクションしてたりして。いや、コレクターとのつながりがある可能性もあるよね。
やだやだ。私が買う!鍋として使える上に、頭にのっている感じ、全然重たくないもの。
しかも基本頭にのせる防具だなら、手がふさがることもないし。荷運者として、無駄な荷物を運んでいることにもならない。すごくいい鍋だよ!
いや、鍋にも使える防具だよ。私にとって、これ以上はない鍋……じゃない、防具だよっ!
ちょっと頭の上で不安定な感じがあるけれど、紐で括り付けるなりなんか工夫すればいいよ。うん。
「ご、五枚です」
「買いま」
……買いますという声とかぶるように、店員の声が聞こえた。
え?
嘘でしょ?
さっき、金貨1枚だって言ってたのに……。金貨5枚?