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「サージスさん、肉は?肉は食べられそうですか?すぐに焼きますから!」
サージスさんの手が力なく上がる。
「肉は駄目そうですか?」
「味……焼いただけの肉は、無理……味付けして……」
「はいっ!わかりました!」
味付け?
山椒のことかな?それとも味噌?
山椒の実は、あいにくと使いきってしまってもうない。
味噌か、それ以外になにか調味料はないかな。
片目をつむる。【スキルジャパニーズアイ発動:3重】あ、三重だった。
収納鞄の中から宝箱を取り出す。
「まぁ!宝箱ね!何が入っているの?」
シェリーヌ様の目がギラリと光った。
そして、いつまにか目の前にシェリーヌ様の美しいお姿が。
「あ、いや、これは、その……」
冷や汗がだらだら。
シェリーヌ様が期待に満ちた目で私の手にしている宝箱を見ている。
ここで、隠すように鞄の中にしまうわけにはいかないよね……。ど、どうしよう。
「そ、それが……」
ぱかりとふたを開けば、すぐにシェリーヌ様ががっかりした表情を見せた。
「ハズレドロップ品……久しぶりに見たわ……」
そうですよね。はい、がっかりしますよね。
「スピード重視でとにかく鞄の中に中身も確認せずに放り込んだものなので、えっと、仕分けした後、不要なものはダンジョンで捨てるために入ってるんです……」
「ああなるほど。サージスのペースでモンスターやっつけてたらすごい数のドロップ品だものね。ダンジョンの中で確認するよりもそっちの方が効率的かしら。……まぁ、収納力の高い鞄がないとできない技だけれど」
ほっ。なんとか、ハズレドロップ品、通称糞の入った宝箱を持っていたことをごまかせた。
「リオはいい子ね。ちゃんとゴミを次にダンジョンに行ったときに捨ててくるんだもの」
はぁ、本当は食べるために持ち歩いてるんで、褒められると心が痛い。
すいません。シェリーヌ様……。良心が痛くて、これ以上耐えられない。
「薪は火を起こしておいたよ」
ちょうどタイミングよくシャルから声がかかる。
「ありがとうシャル」
「追加で薪を集めてくるよ」
シャルが再び薪集めに行く。
宝箱を収納鞄にしまって、鹿の肉を食べやすい大きさに切って、串にさして火に近づけて焼く。
振り返れば、倒れた状態のサージスさん。
一刻も早く食べさせてあげたい。
リクエストは味のついた肉。
味噌は、使えない。いや、味噌だけじゃない。ハズレドロップ品と言われる調味料は取り出すことができない。またシャリーア様の目が光るのは間違いない。
まさかの、味噌封印。