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「あ、は、はい。ありがとうございます。えっと……」
治療済みとはいえ、なんだかサージスさん全然大丈夫そうには見えないんですけど。
目の前にはあこがれのシェリーヌ様がいるんだけど、今はそれよりも座り込んで顔を下げたままピクリとも動かないサージスさんが心配。
「サージスさん……本当にだいz」
治療スキル持ち……すごい能力を疑うわけではないし、シェリーヌ様の言葉も疑うわけではないんだけれど、サージスさんのいつもの元気な声を聴くまでどうしても心配で……。
グググググキュルルルルー。
ん?何か動物が鳴いた?
グッルルルルルルルルルー。
餓鬼さんでもフェンリルさんでもない、他の鬼?モンスター?
慌ててキョロキョロと周りを見回す。
「死ぬ」
え?
サージスさんが私の腕をつかんだ。
「死ぬって?サージスさん、大丈夫ですか?死なないでくださいっ、絶対に嫌ですっ」
跪いて、サージスさんお顔を下からのぞきこむようにしてみる。
死ぬって、いくら治療してもらっても、あれほどひどいけがをおったんだ。
何か寿命を縮めるような傷もあるのかもしれない。
「お腹が……」
サージスさんが顔を上げた。
いつものサージスさんとちがい、ずいぶんやつれている。ああやだ、死んじゃう。
サージスさんが死んじゃうっ!
「空きすぎて……死ぬ……」
え?
え?
え?
サージスさんがそのままパタンと倒れた。
「た、た、た、たいへんだ!大変だ!シャル、サージスさんが死んじゃうっ!」
ボロボロと涙がこぼれる。
お腹がすいて死んじゃうなんて、サージスさんも餓鬼さんのようになっちゃうの?
今とても苦しいんだよね?
「ちょ、リオ、何、泣いてるの……」
シャルが唖然とした顔をする。
「だって、サージスさんが、お願いシャル、今すぐ薪になるものを集めて!」
「あー、まぁそれはいいけど。っていうか、泣かなくても大丈夫だよ。サージスさんが死ぬわけないだろ?」
シャルが大丈夫って言ってくれるけれど、でも。
本人が死ぬって言ってるんだよ?
死ななかったとしても、死ぬほど苦しいのは確かだよ。
私には分からないけれど、あれだけ激しい戦闘をしたあと、たくさん血も流したんだもん。
治癒スキルで怪我とかは治してもらったけれど、もしかしてそれにもたくさんエネルギーが必要で、本当に死にそうなぐらいの空腹を感じて苦しんでいるかもしれない。
「すぐに、何か食べられるものを準備しますっ」
あたりをきょろきょろと見回すと、解体途中の大きな鹿が目に入ってきた。
肉がある。
サージスさんは大丈夫だと思う人は、挙手
(-ω-)/